カナダでも環境リスクに厳しい行政措置:旧経営陣が環境浄化費用の支払い

昨年末近く、カナダで2012年に破たんした航空機器メーカー(Northstar Aerospace)の旧経営陣が、オンタリオ州環境庁に総額475万カナダドル(約4.5億円)の支払いに合意したというニュースがありました。

同社が保有していた土地にクロムやトリクロロエチレンなどの有害物質による汚染があり、同社の破たんとともに対策が滞っていたために、当局が替わって浄化対策を実施していました。当局では、2004年以降、すでに上記の4倍近い1700万ドル以上を支出しており、これらの費用の一部を負担するように請求されたもののようです。

カナダでも米国と同様に環境汚染について役員や部門責任者個人への責任が課されるケースがありますが、通常、役員賠償保険(D&O保険, Directors and Officers Liability Insurance)によりカバーされるようになっています。しかし、本件ではその費用がカバーされていなかったということです。

別のテーマで紹介しましたが、D&O保険もかつては、一般的に環境汚染に関する賠償は除外されていたようですが、最近ではこれらを除外しない保険が増えてきているということです。ただし、補償の対象となる損害(loss)には各種定義があり、実際に対象とならないものも多く、今回のように役員個人の賠償責任を守るような形には必ずしもなっていないことが、問題提起されています。保有しているD&Oの保険内容に環境浄化費用の補償が明示的に示されているか、除外されているかを確認しておくことは重要になるでしょう。

昨今北米へ進出する日本企業も多くなっていると思いますが、米国だけでなく、カナダでもこのように厳しい罰則や法規制であることを留意されつつ、適切なリスク管理を進めていただきたいと思います。