企業経営とサステナビリティの一体化

2015年2月

世界各地で環境や社会全体の持続可能性(サステナビリティ)への関心が高まり、企業の経営においては、サステナビリティとの一体化が進んでいる。

先月紹介したように、日本でも上場企業を中心に「コーポレート・ガバナンス・コード」が確定し、公表されると、株主以外のステークホルダーである顧客、従業員、取引先、地域社会等に対して環境問題や社会・労働問題についての情報開示や説明責任が求められるようになるだろう。CSRが企業経営と一体化するなかで、今年の大きな流れとして世界的に示されていることは以下の3つのテーマがある。

第一は、重要性の評価である。CSRに関わる環境や社会・労働問題は幅広いテーマにわたることから、自社や自社グループにおいて、その所在する地域社会にとって重要な要素を選定し、説明することが求められる。CSRの取組におけるこの重要な要素について、“マテリアリティ(重要性)”という表現で示される。各企業がどのようなテーマや項目を重要性が高いと考えているのかは、企業にとっての大きなメッセージであり、経営戦略との整合性が求められる。

第二は、CSRとリスクマネジメントの一体化である。企業経営において収益管理とリスク管理は表裏一体であるように、CSRに関わる情報開示や取組内容においても、様々なリスク管理が必要となっている。

海外では、上場企業に対し環境や労働関連の情報を毎年開示することを義務づけている国もあり、これらの情報開示についてもリスク管理が必要になっている。

2015年から、国際規格であるISOのリスクマネジメント規格の考え方が、他の規格全体に組み入れられる方向となり、品質管理の国際規格ISO9001の改訂作業においてリスクマネジメントの考え方が導入される予定となっている。

環境マネジメントシステムISO14001では、各組織の環境影響を評価する過程においてもリスク管理の考え方が導入されているように、今後企業経営の様々な領域でリスクベースの考え方が組み入れられる必要性が増すことになろう。

第三は、サプライチェーンのCSRの取組の強化が挙げられる。経済活動がますますグローバル化する中で、原材料や製造・加工、業務サービス等を含め、自社単独で国内のみの業務で完結する事業はほとんどなくなりつつある。

企業の社会的責任を先導する大手企業においては、自社内だけでなく、自社が調達する製品やサービスの行程となるサプライチェーンでのCSRの取組が求められるようになっている。これまでチェックリストやアンケートなどの簡便な方法で実施されていたサプライチェーンのCSRの取組は、調達先への監査や取り組みの改善に向けた研修などより積極的な形で進められることが予想される。

上場企業をはじめとする企業の社会的責任は、引き続き、経営との一体化が徐々にかつ着実に進められるようになっていくだろう。

*本稿は、2015年2月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。