地域と共生するCSR

2014年7月

サプライチェーンを含めた製品・サービス全体のCSRへ

エコや環境配慮をアピールするいわゆる「エコグッズ」やエコラベルはあらゆる製品分野でみられるようになってきたが、環境への配慮に加え、原材料の生産や製造工程の労働やコンプライアンスにも配慮する、いわゆる“サプライチェーンのCSR”が、世界的に広がってきている。

日本では環境マネジメントがいち早く企業に広がり、CSRにおいても環境への配慮を中心とする取組が続いてきたが、欧州や米国では多国籍な労働環境の中で、労働や人権問題に対する取り組みが進んでいる。

サプライチェーンのCSRの取組は、かつて欧米のスポーツシューズのメーカーが、委託していた新興国の工場で児童労働が発覚し、不買運動が行われたことがきっかけになった。人気の高いブランド製品が、一部の委託工場での法令違反や倫理的に問題のある環境で製造されていたことを知れば顧客は失望するだろう。このため、原材料から販売まで自社の管轄の及ぶ製品のライフサイクル全体で、CSRの配慮が求められるようになった。自社ブランド(プライベートブランド)で委託生産する場合に、自社の製造工程と同様の検査や監査を実施するだけでなく、研修や外部からの監査等を取り入れて法令順守を徹底するのが昨今の流れになっている。

委託先の工場で労働や人権問題がないか、環境汚染を発生させていないか、汚染予防が進められているか等、労働問題や環境配慮のチェックに加え、各種法令を遵守しているかなどCSRに係る様々な要素を評価するようになっている。このため、監査項目は200項目を超えることも多く、監査を実施する側も、受ける側も一定の負担になっている。

そこで、こうしたCSRの価値観を共有する企業間で、共通の監査基準を策定し、その監査基準を採用する企業間で、工場監査結果を共有するという動きも出ている。委託先の労働・環境問題は、特定の企業や業界だけでなく、様々な業界に共通するものであるから、共通の指標が活用しやすい。また、大手企業側にとっても、受託工場側にとっても監査の負担が少なくなり、メリットは大きい。

こうしたサプライチェーンのCSRの動きは、小売業や製造業、衣料品などの業界だけでなく、最近では水産物やサービス分野、公的機関にも広がっている。水産物については、「持続可能な水産物に関するガイドライン(案)」が、海外の水産事業者を中心に進められ、来年1月に運用開始予定である。また、アメリカ政府機関などが参加する「持続可能な調達リーダーシップ協議会」は昨年発足し、農務省やエネルギー省等の連邦政府機関や州政府・地方自治体も参画している。

企業の社会的責任の取組は、組織単体からグループ会社に広がり、さらに主要製品やサービスのサプライチェーン全体に広がることを通じて、必然的に国内だけでなく海外から調達する製品も対象になるようになっている。

*本稿は、2014年7月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。