高齢化社会を支援するCSR

2014年9月

数ある統計や予測の中で、最も予測の精度が安定して高い統計データの一つは、人口予測であるという。

敬老の日を迎え日本国内の65歳以上の人口は約3300万人となり、全人口の4分の一を占める。20年後の2035年には全人口の3割を占めるようになると予測されている。

確実に迎える高齢社会に向けて、今後10年から20年かけて官民・公私問わず、様々な取組が必要になってくるであろう。

企業にとって、高齢化する顧客への対応は重要な顧客サービスであり、地域貢献である。CSRの取組の一つとして重要な社会的事業であるともいえるだろう。

現在、郵便事業で実施されている一人暮らし高齢者の見回りサービスや声掛けの「ひまわりサービス」は、今後より普及が期待されるサービスだ。

郵便物の配達サービスを基盤に、顧客である高齢者を見回り、対話をする時間は、一人暮らしで、対話が少なくなりがちな生活のなかで、貴重な安らぎの時間になっているだろう。

さらに有償で実施している「みまもりサービス」では日常品の買い物支援なども試験的に実施されている。

こうした、企業のもつ技術やインフラを活用したサービス拡充の余地は大きいと考えられる。

今後、高齢者を支えるこうしたサービスが、最新の技術やサービスを活用して、ますます進化していくことに期待したい。

近年、急速に普及している携帯端末やスマートフォンは電話や通信機能だけでなく、ビジネスへの活用も急速に進んでいる。着用型の端末によって、国内だけでなく世界中の人とリアルタイムでつながることができるようになっている。

しかし、高齢者の多くはこうした情報通信機器を直接活用する機会が少ないのが現状だ。

これを、高齢者が使いやすいIT機器の活用によって、会いに行くことが難しい遠隔地にいる家族や友人と、画面を通じて結び付けることができれば、より効果的な力を発揮するのではないだろうか。

例えば、配達や集配管理のために使用されている携帯端末システムを利用し、高齢者の「声」のお届けサービスは可能になるのではないだろうか。配達員が録音した音声をクラウド上にアップロードし、その音声を発送者がダウンロードすることができるようになれば、荷物の送り手と受け手が音声を通じてつながることができる。対面での会話や、自分で電話をかけることが難しい高齢者同士のつながりも可能になる。

高齢者同士の兄弟姉妹や家族、友人の声を時間差で聞くことができるようになると、日常生活の刺激にもなるだろう。

高齢化社会に向けたCSR活動は、これからあらゆる分野で広がることが予想される。

日本だけでなく、世界的に進む高齢社会に向けて企業の事業インフラやサービスを工夫し、高齢社会と調和したCSR活動が確立できれば、企業にとって大きな財産となるだろう。

*本稿は、2014年9月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。