GRI G4によるCSR情報の経営上の意味—重要(Material)情報の開示に向けて

GRIの新たなガイドラインG4では、ガバナンスやサプライチェーンなど、開示項目の拡充だけでなく、開示するCSR情報の重要性(Materiality)について重点が置かれており、CSR情報の経営上の位置づけについて、改めて留意する時期にはいってきたといえそうです。

G4では、各社が自社の事業にとって重要性の高い項目を選定して報告する形となっています。重要性が高い情報は開示し、重要性が高くない情報は開示する必要はないという仕組みになっています。このため、重要性を評価するための指針が、260ページ超のマニュアルの160ページにわたり項目別に記載されています。

ここで企業が自社にとってMaterial (重要な)項目を評価し、開示することに伴う、CSR情報の経営上の意味について考えてみたいと思います。

現在、多くの国で企業の財務報告には、経営上の重要情報の開示が求められています。

たとえば米国SECルールに関する重要性(Materiality)とCSR・Sustainability情報については、米国のSASB(Sustainability Accounting Standard Board)から詳細な説明がされており、業界別(現在は、ヘルスケア業界)の重要項目に関する指標をMateriality Mapとして開示しています。

G4に基づく開示では、自社で重要な(Materialな)情報を評価してCSR情報として開示する考え方となっているため、重要情報に絞って開示ができ、また業界の重要項目に関するこれらの情報は、自社の重要な項目を評価するうえで有用であるといえます。一方、業界として重要な情報と位置付けられた項目について、自社の重要項目と相違する場合には、その説明を求められる機会も想定しなければならないかもしれません。さらに、開示しているCSR情報と財務情報での重要情報との整合性を留意することも重要になってくるでしょう。

これまでCSRの情報は定性的な自社の良さを伝える情報が多く、数値情報についての第三者認証などは限定的な範囲で行われていました。しかし、G4をきっかけにCSR情報は、より経営の関与が大きい重要情報という位置づけにシフトしていく流れになり、定性・定量情報ともに、これまで以上にリスク管理をしながら開示していく必要性が増していると考えられます。

なお、すでに米国の化学メーカーDow Chemical社やスポーツ用品を扱うTimberland社などでは、四半期毎のCSR更新情報を開示しており、報告頻度についても財務報告との連動が進められる動きもでています。

*英文GRI G4のダウンロードと日本語訳の発行時期についてはこちらをご参照ください。

**欧州の非財務報告の開示ルール案と統合報告の動きはこちらをご参照ください。

 

 

 

 

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