SASB_エネルギー資源部門のドラフト開示

先週、アメリカのSASB (サステナビリティ会計基準機構)から、エネルギー資源業界のガイドラインが公表されました。昨年からヘルスケア、技術・通信、金融と、相次いで各業界での持続可能性に関する重要事項を公表していますが、今回は石油や天然ガスの以下8分野について、非再生資源(Non-Renewable Resources)としてガイドライン素案がでています。 続きを読む

2013年12月:統合報告書の枠組み(Framework)公表

昨年12月、予定されていた統合報告書の枠組みが正式に公表されました。Frameworkと呼ばれる報告書のガイドラインに加え、ドラフトから結論に至った経緯を説明する資料とサマリー(Q&A)の3つの出版物が同時に公表されています。

統合報告書は、その定義や目的についても様々な意見があり、当初は企業の財務資本の分配を評価するうえで役立つものという記載がありましたが、最終版では、「その組織がどのようにして価値を創造しているか」を説明するものであり、「財務及びその他の情報が含まれる」としています。

資本(Capital)を以下のように分類して、それぞれの資本を活用して組織が持続的な経営をしているのかを示すものという概念が示されています。(正式な和訳ではないので、原文をご参照ください。) 続きを読む

アメリカの中小企業融資の新ガイドライン:2014年1月1日から施行

 

2013年9月に発行された、米国中小企業庁(SBA)の融資保証に関するガイドラインが2014年1月1日から施行されます。

以前のブログにも紹介した中小企業庁の融資保証等を受ける際のガイドラインですの改訂版です。

前回の紹介から環境方針は変更がありませんが、その他の手続きに大きな変更があるようで、その一つは提出書類の電子化です。各種届出はE-Tranと呼ばれるシステムに電子ファイルとして提出することが求められます。(その他重要な変更もあるようですので、そちらにご関心の方はガイドライン等をご参照ください)

環境方針は、すでに今年3月から施行されていますが、融資対象が、環境影響のある業種(別紙にNAICコードが規定されています)の場合、融資規模に関わらず、地歴調査・質問状や政府記録確認を含むフェーズ1調査から実施し、融資機関は”免責同意書”(SBA Environmental Indemnification Agreement)を添付しなければならないことになっています。

この同意書は全20ページあり、環境調査に関する専門用語の定義だけで4ページになります。借り手側は、環境調査(ASTMフェーズ1)や関連情報を提出することになり、故意の隠ぺいなどには罰金100万ドル(1億円)、禁固30年までの罰則も明記されています。厳しいですね。

フェーズ1調査は、ASTM フェーズ1環境サイトアセスメント(ASTM E1527)の2005年版を規定していますが、先月改訂された13年度版も実務的には受け付けるという方針のようです。

米国では、土壌汚染の責任については、無過失・連帯責任を原則とするため、銀行など融資機関でも融資の際に土壌汚染調査フェーズ1、フェーズ2を独自に実施することが多くありますが、今回のものは、中小企業の融資にもそれを適用することになったものです。

これまではガソリンスタンドやクリーニング業など、中小企業の融資の際には、環境調査が実施されないことも多かったということですが、今回の中小企業庁のガイドライン改定により、中小規模の融資における環境リスク調査が広がることが予想されています。

ASTMの改訂については先日BELCAさんで講演させていただいた資料に概要を入れていますのでご参照ください。

 

 

持続可能性報告と財務報告の一体化に向けて

サステナビリティ報告、CSR報告書と財務報告の一体化となる統合報告に向けた動きは国内でも進んでいますが、先週、欧州で財務責任者(CFO)が持続可能性に向けて議論するCFO(財務責任者)の会が発足しました。

イギリスのチャールズ皇太子のもとで、大手企業10数社のCFOが集まり、今後、環境や社会面の課題解決やビジネスをどのように企業戦略や財務報告に結びつけるかという議論を進め、統合報告や自然資本に関する具体的なガイドラインの作成などに取り組むとのことです。

今後1年での実施事項は以下の通りとなっています。

  • 資本的支出の評価に持続可能性の視点を入れるなど、意思決定の透明化に向けたガイドラインの作成
  • 自然資本、社会資本の評価や計測の方法の開発に向けた貢献
  • 持続可能なビジネスモデルに関する投資家の関わりの改善

統合報告や自然資本の動きも踏まえてか、または政策的な影響の大きい公益事業のためか、水やユーティリティ、不動産関連などインフラ系企業が多い印象です。メンバーにはイギリス企業だけでなく、フランスのダノンやアメリカのWalmart等も含まれています。

日本では、環境報告→CSR報告→統合報告と徐々に移行している企業が多いなか、現状では、CSR報告書を複数部署で作成している企業が多いと思われます。財務責任者がCSRや環境・社会面の開示について考える会というのは、まだあまり聞いたことがありません。

少し先のことのように思われますが、CSR報告と財務報告が本当の意味で統合するためには、やはり財務責任者の見方は非常に重要で、それによって初めて本当の意味の持続可能なビジネスになるのでしょう。イギリスではこの動きに本格的に取り組んでいるという見方ができそうです。

 

マンション建替えに潜む隠れた問題

来年度の税制改正にマンション建替え推進に対する優遇税制が導入されるというニュースが報道されています。

現在、マンションストックは約600万戸あり、そのうち2割以上は1980年代以前に建てられており、旧耐震基準の問題が指摘されています。

ただ建て替えにあたってもう一つの課題は、土壌汚染問題ではないでしょうか。 続きを読む

エコチル調査

昨日富山大学医学部の先生から、環境省のエコチル調査についてお話を伺いました。全国10万人を対象に、母親と生まれてくる子供の環境影響などを分析する調査だそうです。

外部環境の影響については限定的な範囲に行われるようですが、どのような食べ物を食べたか、それによる子供の疾病率の影響などを長期的に詳細に調査し、化学物質の暴露経路が子供の発育や疾病にどのような影響をもたらしているのかを、調べていくもののようです。

最近、欧州では土壌汚染の健康影響などの調査が進んでおり、土壌汚染そのものからの健康影響はあまり明確でないという結果もでています。

”環境”分野はとても広いので、異分野の専門家の方々とお話しさせていただくと大変勉強になると同時に、様々な側面の研究が進んでいることを知り、とても新鮮に感じます。

調査研究によって、環境汚染の適切なリスク管理が進むと同時に、不安や心配も解消されるとよいですね。

 

 

アメリカの土壌浄化ビジネス市場:日本の10倍規模に

2012年の国内の土壌浄化市場の市場規模は約800億円になっていることは、先般のブログでもご紹介しましたが、アメリカでは、製造拠点の統廃合やシェールガス開発関連の案件もあり、土壌浄化の市場も継続的に成長を続け、2012年は約8,000億円と、いつの間にか日本の10倍の市場規模になっています。

2013年には8,300億円強になるとの予想もでています。

数年前に、国内市場規模が約2,000億円あったころには、アメリカ市場は6,000-7,000億円くらいで、3倍前後でした。アメリカは国防省やエネルギー省の案件が半分近くありますので、ほぼ2倍と、GDP比と同程度でした。

アメリカ市場も、成長要因や差別化要素などこれまでの市場と異なっているところもあるようですが、継続して成長している市場では技術開発の予算配分も充実し、あらたなソリューションも生まれてくるでしょう。

他の市場も見ながらヒントを見つけていきたいと思います。

PS. 本日、応募していた中小企業庁のミラサポ:第一次審査通過のご連絡を頂きました。

皆様のお力を頂きたいと願っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。

 

 

ユーティリティ業界の将来図:5つのトレンドと6つの視点

先々週、海外の調査会社のWebinarがあり、アメリカ・欧州を中心とするユーティリティ業界の将来動向に関する大変興味深い議論がありました。

日本でも2016年からの電力自由化に続き、ガス事業の自由化の議論も始まっていますが、すでに自由化が進んでいる海外のユーティリティ業界では、今後も大きな変化が続くということです。

セミナーでは大きく以下5つのトレンドと6つの視点から、個別事例や英米オーストラリアなどの電力/ガス会社、エネルギーマネジメント・ソフトウエア、顧客アンケート結果等の紹介もありました。 続きを読む

ブラウンフィールド化進む国内と土壌汚染ビジネス

環境省が取りまとめている土壌汚染対策法の施行状況によると、11月1日現在、国内の形質変更時要届出区域(土壌汚染があるが、現在すぐに対策が求められるのではなく、形質変更時に届け出ることが求められる土地)は、913サイト、要措置区域(土壌汚染対策が求められる土地)は113サイトとなり、合わせて1,000サイトを超える状況となっています。

2010年の土壌汚染対策法の法改正前にあたる2009年度末には、指定区域が約200サイトだったことを考えると、3年半で5倍に増加している状況となっています。すべてのサイトが有効利用されていないわけではないと思いますが、形質変更にあたる、解体や改築などをしない、いわゆる未利用の建物や有効利用が進められていない土地もそれなりの割合になっている可能性があります。

土壌汚染対策が進まずにいることを反映しているためか、社団法人土壌環境センターが発表した昨年度の土壌汚染ビジネス市場は、2006年度のピーク時の半分以下の800億円に落ち込んでいる状況です。(今年度は不動産市況も活発になり、増加に転じると思われますが・・)

こうした中、欧州では土壌汚染対策に関する規制や、汚染土地の健康被害と今後の対応に関するいくつかの進捗が見られます。 続きを読む

環境・サステナビリティに関する実務教育

先週の座談会では、4時間余りにわたって国内外にわたる環境や持続可能性に関する楽しい議論をさせて頂きました。第一線で活躍されている、違った専門分野の方と同じテーマについて議論するのはとても勉強になります。

環境分野のソリューションは、各地域の自然環境や国の歴史文化、ビジネス慣行など、様々な要素を踏まえて成熟していっています。そのため、各国や各地域での違いもあります。そうした違いを知ることで、新たなビジネスのヒントや、現状のアップデートにつながるものもでてくるかもしれません。

今は環境関連の業務の大部分は、実務を通じて習得するOJTがほとんどですが、環境ビジネスに直接役立つ知識や知見を短期間に修得できる大学や実務教育の場が日本にもっとできてもよいのではないかというご意見もありました。

ちょうど、一昨日、米投資銀行モルガンスタンレーがInstitute for Sustainable Investment (持続可能な投資に関する研究機構)を設立したという発表がありました。 続きを読む

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