CSR調達:バングラデシュ惨事後の安全対策の合意

バングラデシュのダッカ郊外の建物崩壊における犠牲者は1,100人を超え、建物の安全管理に関する課題を改めて考えさせられる惨事でしたが、欧米の衣料品ブランドをはじめとするグローバル企業によって検討されていた調達先への対策は、5月中旬に以下合意として発行され、現在では署名企業が40社を超えています。

合意された安全対策”Accord on Fire and Building Safety in Bangladesh”では、署名企業の同国内の全サプライヤーを対象に、安全監査や対策の実施割合などを厳格に定めており、ILOやドイツ国際協力公社(GIZ)等と連携して同国の労働雇用省(Ministry of Labour and Employment of Bangladesh, MoLE)と共に、建物安全対策を推進していく内容となっています。

署名企業からも推察できるように、欧州系の企業が多くなっており、米国企業ではこの同意書には参画せず、別途自社内での取り組みを推進することなどが報道されています。

上記合意には具体的な数値割合なども含まれているため、経営や実務への影響も大きく、各社で異なる経営環境の中、短期間で合意するのは難しさもありそうです。

 

Social Hotspots

日本で、ホットスポットというとセシウムなど放射性物質の値が局所的に高い場所という印象が強いですが、サプライチェーンのCSR評価、CSR調達等における、社会面(労働や人権など)地域や業種の評価をする世界の”Social Hotspots Portal”がオープンしました。

http://socialhotspot.org/

このポータルでは、CSRの評価をする際の社会的側面の評価をするグローバルデーターベースを展開しています。ポータル・サービスを提供しているのは、アメリカ東部メイン州にあるNPO:Social Hotspots Databaseで、製品のSocial Life Cycle 分析に関するガイドラインを、国連環境計画とともに公表しています。
アドバイザリー委員会には、主要なCSR関連組織であるBSRやAccountAbility, SustainAbilityなどのほか欧米の大学の研究者、大手企業、EPAも入っており、賛同者が多いことが伺えます。エコラベル等のデータベースを提供する国際貿易センタ(ITC)とも戦略パートナー関係を締結しており、グローバル展開する調達先の環境・社会面のリスク管理に向けたインフラが整ってきているようです。

CSR報告書のガイドラインであるGRIの最新版G4でも、サプライチェーンの状況報告が拡充されることになり、今後こうしたデータベースを活用する機会も増えてくるのではないかと思います。

これらの情報を社内でどのように活用し、リスク管理につなげるかが課題になりそうです。

世界の廃炉

敦賀原発の今後の再稼働についての報道が続いていますが、世界各国では、原子炉の廃炉はどのような要因で行われているのでしょうか。

世界原子力協会のレポートによると、2013年時点で世界全体の原子炉の廃炉について、その要因別に分類すると、通常の経年や経済的な合理性に基づくものが101、事故によるものが11、そしてこのどちらにも該当しない政治的な決定によるものが25となるようです。このリストが以下のレポートにまとめられています。

http://www.world-nuclear.org/info/Nuclear-Fuel-Cycle/Nuclear-Wastes/Decommissioning-Nuclear-Facilities/#.UZlaC7VU-bM

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GRI G4とCSR2.0 とマネジメント2.0

今週、CSR報告書のガイドラインとして世界で最も定着しているGlobal Reporting Initiative (GRI)の最新版:G4が公表される予定となっています。G4では、サプライチェーンの記載や企業の業務に応じたバリューチェーンに沿ったマテリアリティ(重要性)を踏まえた報告を重視する方向のようですが、開示項目が現状から大幅に増え100項目を超えることも予想されており、CSR業界でも様々な意見があるといわれています。

http://www.verdantix.com/blog/index.cfm/post/92

GRIはCSRの情報開示に関するガイドラインですが、企業の社会的責任(CSR)全般について、これまで比較的個別に、また事業に付加的なアプローチがされ、本質的には企業経営において重視されてこなかったという反省や評価も少なくありません。このため、たとえば上記にも紹介されている意見の一つとして、コカコーラ社からは、CSR報告書は、CSRの専門家だけに評価されるものではなく、より広い範囲の関係者・読者に理解してもらうことが重要であるとして、ドラフト段階のG4について、より技術的にまた複雑になっているのではないかという課題も出されています。

http://www.cokecce.com/news-and-events/news/opinion-the-end-of-the-sustainability-report-by-lucinda-hensman-head-of-sustainability-communications-at-coca-cola-enterprises

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グローバル化する調達先とCSR調達の課題

バングラデシュの首都ダッカ郊外でおきたビルの倒壊事故は、犠牲者が500人を超えると報道されており、インドのボパールでの事故に次ぐ惨事になる可能性があると伝えられています。ロンドンエコノミスト誌では、バングラデシュの建物基準遵守の手続きとともに、同国の基幹産業である繊維業の顧客であるグローバルなアパレル業界に対して、CSR(企業の社会的責任)の在り方を3つの選択肢を提示して問いただしています。

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中国で環境汚染賠償保険が義務化の動き

2013年1月、中国環境保護部と保険監督管理委員会(CIRC)が共同で”義務化する汚染賠償保険のパイロットプロジェクトに関するガイドライン”を公表し、環境保険の普及を進めるという方針を示しています。

パイロットプロジェクトの対象となるのは、重金属や石油化学など環境リスクの高い企業とし、今後、建設プロジェクトに必要な環境影響評価や、環境関連の監査、認証などの行政手続きにおいて必要となるとのことです。現在はまだガイドラインの段階ですが、対象企業は2000社、保険対象額は約3000億円にのぼるとされています。

http://english.mep.gov.cn/News_service/news_release/201302/t20130227_248567.htm

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アジアの環境ビジネス情報

アメリカや欧州には環境ビジネス全般のマーケット情報を提供するEnvironmental Business International Inc. やENDS Europe (Environmental Data Services)などがあり、それぞれ従来型の環境問題から発生する環境ビジネスをベースに、CO2削減・管理・省エネなどに関するビジネス情報を提供しています。

これらの調査レポートやデータに、公的情報や業界団体、他の専門調査会社や業界別の専門誌、専門家などの情報を組み合わせると、基本的なマーケット情報をつかめることが多いものですが、アジアなどの新興地域では、環境ビジネスに関するこうした専門情報源が少なく、比較的公開情報が多いシンガポールや香港などを除いてなかなか情報が収集しにくいと思います。

昨年からマレーシアの会社が環境ビジネスに関する情報サイトを運営し、前年から発行しているという月刊誌も電子版のみになりました。日本の大手企業の情報も数多く掲載しているのでご存知の方も多いかもしれませんが、もともとシンガポールとマレーシアの情報を取り扱っていたメディア企業ということで、東南アジアの情報は特に充実しているようです。アジアの環境ビジネスに関する動きやイベントを探すのに参考になりそうです。

http://www.greenprospectsasia.com/

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