プラスチック規制 北米・大手企業等

米国では、2019年3月下旬、ニューヨーク州で使い捨てプラスチック袋が原則として禁止されることが決まった。カリフォルニア州に続き、州全体の取り組みとしては全米で2つ目の州となる。
同州では、毎年約230億枚の使い捨てプラスチック袋が使用されており、ニューヨーク市の住民だけでも年間100億枚を超える使い捨てプラスチック袋が使用されており、これらを削減することが狙いだ。ニューヨーク州の取り組みでも、肉類や持ち帰り用袋など適用除外があるものの、先行するカリフォルニア州では、プラスチックレジ袋への課金と原則禁止の規制開始後、紙袋とリサイクル袋に置き換えられた。また、レジ袋を使用しない人も増えるようになり、海洋漂流ごみに占めるプラスチック袋の割合が減少する効果もでている。

カナダは東部のプリンスエドワーズ島や西部ブリティッシュコロンビア州の州都ビクトリア市などで規制があるが、民間の動きも活発になっている。
カナダでは、世界的な環境NPOの一つであるEnvironmental Defenseが主導して、2025年までにプラスチック廃棄物全廃を目指す“Towards a Zero Plastic Waste Canada”を掲げ、50近い非営利団体が取組に署名している。
カナダは、プラスチック製品の10%程度しかリサイクルされておらず、大部分が焼却や処分場、また海洋などへ廃棄されており、リサイクルの推進と使い捨てプラスチック製品の削減に向けて法制化にも働きかけている。

こうしたなか、民間企業の動きもある。売上55兆円を超える世界最大の小売業であるウォルマートのカナダ現地法人では、プラスチック廃棄物の削減目標を先行している。
2020年までに、年間3500万本の使い捨てのプラスチック・ストローを、紙などの代替製品に置き換える予定だ。2025年までに、レジ袋を50%(約10億枚)削減し、プライベートブランドのプラスチック容器や梱包材を100%リサイクル製品とする。
内部部門で達成できる本社と物流センターでは使い捨てプラスチック製品を2019年末までに廃止する。
ウォルマートは、その事業規模から大きな影響力があるが、SDGsについても様々な取り組みをしており、廃棄物の削減は大きなテーマの一つとなっている。2016年に掲げた目標のなかで、2025年までにプライベートブランドのプラスチック梱包を100%リサイクルすることを宣言しているが、それ以外にも食品廃棄物を削減する取組など同社の基金を通じてもサポートしている。

スイスに本社をもつ大手食品メーカー・ネスレも、プラスチック廃棄物削減を進める。チョコレートや菓子類のパッケージは、プラスチック廃棄物の中でも一定量を占めており、これらの製品を多用する同社は、2025年までに世界的にリサイクル製品に置き換えることを宣言した。 2019年1月にはリサイクルに適さないポリスチレンやポリ塩化ビニルなどの素材をネガティブ・リストとして公表し、今後、これらの素材を新製品には使用せず、既存製品においても廃止するとしている。

こうした世界的な大企業の動きは、消費者だけでなく生産者やサプライヤーなどのパートナーへの影響も大きく、プラスチック製品の代替素材は予想以上のスピードで進む可能性もありそうだ。

ネスレのネガティブ・リスト(2019年1月)

素材 適用例
ポリ塩化ビニル(PVC) ラベル、フィルム、トレイ、インク、シール層
ポリ塩化ビニリデン(PVDC) フィルム類
ポリスチレン(PS) トレイ、ヨーグルト容器、コーヒーカップ等
発砲スチロール(ePS) トレイ、ポット、輸送保護具等
再生セルロース ねじれ包装材
リサイクルできない
プラスチック・紙の混合品
紙・プラスチックラミネート、ラミネート紙カップ

*仮和訳

*本稿は、2019年4月17日環境新聞に掲載されました。