米国でも本格化するESG経営

2021年7月にグローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンス(GSIA)が公表したレポートによると、2020年時点の世界のサステナブル投資資産は35兆ドル(約3800兆円)となり、米国は約半分(48%)、次いで欧州(34%)、日本は世界全体の8%を占めている。地域別の定義の違い等により地域別の単純比較はできないものの、北米や日本は拡大基調が続いている。

ESG投資を含めたサステナブル投資資産が増えることによって、企業経営にどのような影響があるのだろうか。

弊社と隔月でWeb会議を実施しているEnvironmental Business International社がアンケート調査を実施したところ、ESGや脱炭素の要素を企業や事業の評価基準に加える投資家、金融市場の動きは、米国企業の経営に大きな影響を及ぼしているようだ。

同社のGrant Ferrier社長によると、アメリカでは、現在、急速にESG経営と脱炭素の動きが進んでおり、企業だけでなく、大学や自治体でも取組が進められているという。これまでのような一時的なトレンドや表層的な取組ではなく、経営戦略として取り組む時代になってきた。

この背景は、脱炭素や循環型経済、ダイバーシティや人権問題に取り組まなければ、投資家や銀行などの金融機関からの資金調達が難しくなるようになっているためだ。具体的には、化石燃料関連の事業やプロジェクト、またESGに関して課題のある事業等には資金が容易に集まらず、脱炭素に向けた設備投資や研究開発にはより優位な状況にシフトしつつあるという。

投資家だけでなく、消費者が企業を選別する意識も徐々に高まっているようだ。食品や衣料品などをはじめ、消費財を取り扱う企業や流通業は、カーボンニュートラル目標などの明確な方針を示す必要があるという。将来に向けた取組であっても、CO2の排出削減目標を設定することで、この企業は、「サステナブルな社会に向けて舵を切っている企業」であり、地球に負荷をかけ続けることを容認しないメッセージになるという。

現在、ESG投資に関する評価基準は、まだ様々な指標が変化の途上にあり、会計基準のような統一されたものはない。気候変動に関する開示ガイドラインとしてコーポレートガバナンス・コードにも明示されているTCFDは開示内容の拡充を推奨しており、10月頃に補完ガイダンスを公表する予定だ。指標の国際的な共通化等には少し時間がかかる見込みであることから、確定を待つ前に、徐々に主要な共通指標については、開示の準備を進め、取組を進める必要がありそうだ。

*本稿は環境新聞(2021年9月15日)に掲載されました。