TCFDの次に、自然関連財務情報開示(TNFD)へ

6月5日にロンドンで終了したG7財務大臣会合では、各国で推進されているTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に沿った気候変動情報の開示について改めてその重要性を強調すると共に、国際会計基準の設立団体であるIFRS財団における気候関連の情報開示ルール策定に向けて賛同する表明を行った。

上場企業等への気候関連情報については、欧州等で“義務化”を推進する発言が報道されていたものの、義務という表現にはならず、重要性を強調する表現となった。

一方、今回のG7財務大臣会合の声明文では、あらたな枠組みも提唱されている。自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures, TNFD)といわれるもので、生物多様性を含めた自然資本の考え方をベースにしたより広い環境価値に考慮した取り組みを推進する動きについてである。

自然資本の考え方はかなり前から紹介されていたが、このタイミングで言及された背景としては、今年2月にイギリスで公表された通称ダスグプタ・レビューと呼ばれる生物多様性に関する報告書があるようだ。

生物多様性の経済学とするダスグブタ博士による報告では、世界全体で毎年4兆ドルから6兆ドル(約440兆円から660兆円)の土地や水、生態系などの自然資本価値が影響を受けており、これらの金銭的価値を現在の経済モデルでは反映されていないとしている。

また、1992年から2014年までの間に一人当たりの生産された(人工)資本は世界全体で倍増し、人的資本は13%向上しているが、一人当たりの自然資本は40%減少しているとし、自然資本を犠牲にした経済成長を続けていることを警告している。

この報告書は、2006年に発表された気候変動に関するスターン・レビューに通じるものであり、気候変動に次いで自然資本への配慮を、財務会計をはじめとする経済システムに組み入れることを提唱している。欧州では、4月に実質的に採択された気候タクソノミー委任法により、気候変動に配慮した事業の定義をしているが、今後、気候関連以外の環境配慮についても考慮する方向となっている。

国内では今月改訂されるコーポレートガバナンス・コードに加え、5月に成立した地球温暖化対策推進法によって、企業は事業所ごとのCO2排出情報を電子報告することが義務付けられる。これらの情報は、ESG投資等を進める企業評価に活用されることが期待されている。

このように、当面は気候変動関連において進められる金融市場の取組と企業の開示情報拡充の進展が進められる方向にあり、さらにG7財務大臣会合の声明にそったTNFDがTCFDと同様に発展していくのか、今後数年の推移を見守る必要がありそうだ。

*本稿は、環境新聞(2021年6月16日号)に掲載されました。