住宅の環境リスク調査(考)

たまたま見ていたテレビで、今朝紹介されていた新潟県の住宅で石油が流出したというニュースがありました。個人宅では、対応できないレベルの大変なケースですが、そろそろ日本でも住宅での環境リスク調査(また公的保険的な枠組み)の必要性が高まっているのだなと感じました。

以前のブログで紹介していますが、アメリカの住宅取引のフォーマットには、土壌汚染の調査に加え、地下タンクの有無、ラドン等の状況についても有無を記載することになっています。

イギリスでは住宅取引の8割以上で環境リスク調査が行われています。オランダでは全土で土壌汚染マップを整備し、不動産取引の際には参照することが慣例化しています。

既存の住宅における今回のような案件をどのように扱うのかは、別途検討が必要ですが、多くの住宅では、環境リスクの調査をしないまま取引されています。今後、適切な調査を実施した場合の免責や、一定の公的基金から公的補助や低利・無利子融資を受けられるようにする仕組みが必要になってきているのではないかと改めて考えさせられます。 続きを読む

ホームページを更新しました

弊社ホームページを更新しました。

9月26日に開催するセミナー情報については、 随時アップデートします。

ご関心がある方には、パンフレットができましたらご送付致しますので、こちらまでご連絡ください。

≪海外の環境デュー・デリジェンス・セミナー≫(参加費無料)

日時:9月26日(木)14時から16時30分(予定)

場所:弊社オフィス(東京:浜松町)

 

 

セミナー開催のお知らせ≪海外の環境デューデリジェンス≫

9月26日(木)午後、弊社オフィス(東京:浜松町)にて、”海外の環境デュー・デリジェンス・セミナー”を開催致します。(SGSジャパンさんとの共同開催です。)

海外進出や海外拠点の再編の際には、土地や施設の環境リスク調査、コンプライアンス調査は不可欠です。

アジアではこの数年、環境規制の法制化・厳格化が進んでいるほか、土壌汚染については、日本と異なった法的責任を課している国がほとんどです。土壌汚染については、影響も大きいため、土地の購入時だけでなく、工場のリース時にも調査を実施し、契約上のリスク管理をすることが重要です。

セミナーでは、国内外の環境リスク対策のためにどのような対応をとる必要があるのか、事例を踏まえてご紹介します。ご関心がある方には、パンフレットはこちらからご確認ください。

 

産業用地の土壌汚染発生率:日米でほぼ同じ

数十年にわたり化学物質などを使用して操業していた工場で、土壌汚染があるかどうかは、国が違っても大きな違いはないようです。

6月に参加したアメリカの会議では、米国の製造・サービス業などで、設備・施設別に、操業年と土壌汚染の関係を調査した研究結果が紹介されました。

調査目的のひとつは、”操業の長さと汚染の発生率に相関関係はあるのか”というものでした。つまり、長く操業している工場には土壌汚染がある可能性が高いのか、という問題提起です。有害物質を使用していた工場などでの汚染発生確率は、施設の種類別に若干相違があるものの、だいたい50-70%(基準超えは30-50%)という発表でした。

また、操業期間と土壌汚染の発生率との相関関係はあまり明確にはでていないという考察でした。(地下水汚染については操業期間の長さが影響するという結果がいくつかありました。)この調査は、比較的小さな統計母数でしたが、土壌汚染の発生確率について、日米でほぼ同じくらいの確率になっているのは興味深いものでした。

日本で同じ目的の研究はみていませんが、日本のデータとしては、土壌環境センターで資料調査後(つまり有害物質を使用していた履歴などがあることが確認された後)に実施された土壌調査では、基準を超える汚染が発覚する可能性は50-60%程度です。(これについては、数値だけの紹介ですが、以前の講演資料に入れています。)

また、以前環境省のブラウンフィールド調査で実施されている、都市計画地域の用途別に東京都のデータをベースにした土壌汚染の発生確率では、工業専用地域では約35%となっています。

発生確率が高いかどうかについては、いろいろな見解があると思われますが、むしろ残りの3-4割にあたる工場では、長年にわたり操業を続けながらも汚染が発覚しなかったことは有益な数字であるように思います。

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猛暑と気候変動とビジネスリスク考

日本でも猛暑が続く中、原子力発電所の新たな安全基準に基づく再稼働が申請されました。

各地で夏の平均気温が記録的に高まっているということですが、昨年、海水温度の上昇により冷却水の温度規制から、12日間稼働停止になったアメリカ・コネティカット州の原子力発電所では、同様の稼働停止がないように、5月に米国の原子力規制委員会に要望書を提出したということです。

同じ施設内でも海水の深いところから取水している施設の冷却水は、海水の温度上昇が相対的に少なく、稼働停止には至らなかったということですが、原子力関連の水問題について過去40年の案件がまとめられるなど、もともとこの問題がある程度認識されていたことが示唆されています。

NRCは、さらにデータ提供を求めたというコメントが報道されており、結論は来年以降になるため、今夏も同じ問題が再発することも懸念されているようですが、現状では昨年よりは若干気温も低いということです。

詳細はコネティカット州の新聞に記載されています。

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不動産の責任投資とESG

週末の日経ヴェリタスに欧米年金基金からの投資マネーを獲得するために、国内のREITや不動産会社でESG評価を受ける会社が増えているという記事がでていました。グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB)2013年は、昨年の24社から30社強に広がる見通しということで、海外での責任投資の動きが国内の不動産市場にも広がりつつあるようです。国土交通省での紹介資料はこちらにあります。

このGRESBの地域別参加会社は欧州が過半を占めているように、2009年から欧州で始まった民間の枠組みのようですが、GRIやCERESなどグローバルな組織や、グリーンビルディングカウンシルなど米国やオーストラリアの組織も参画しています。

2013年の調査内容(Survey)をみると、環境面では、エネルギー利用、水利用、廃棄物、土壌汚染のほか、米国で課題となっているカビ(Mold)などのリスク管理項目や、スマートグリッドの導入割合、サプライヤーや工事請負会社のサステナビリティに関する状況などが調査項目に入っています。エネルギーのパフォーマンス項目だけで18項目あり、全体では20ページのアンケート調査ですので回答そのものもたいへんそうですが、物件毎の個別要素が強い不動産全体の状況が把握できれば、投資や管理する側としても新たな発見や評価軸もでてくるのではないでしょうか。

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住宅の環境リスク調査

5月下旬に参加させていただいた富山大学のシンポジウムで、住宅における環境リスク調査の必要性が提唱されており、海外での動向について少しコメントさせて頂きました。

アメリカではラドンやアスベストに関する情報開示ルールが州別に適用されているところがありますが、最近でもこれらに加えて、敷地内の地下タンクや有害物質の漏えい(土壌汚染)などを含めたProperty Condition Reportを住宅取引に義務付ける州もでています。 続きを読む

アメリカ:融資時の環境リスク評価:環境専門家にはプロフェッショナル保険が必要

サンフランシスコで行われたEnvironmental Bankers Associationの会議に米国の中小企業庁Small Business Administration (SBA)の環境リスク管理の責任者と地域の担当官が計3名参加して、2013年3月から施行されている融資時の環境リスク評価プロセスについて説明をしていました。(ご参考

発表内容の大部分は、公表されている文書に記載されているものですが、実際に話を聞くと見落としていた部分などが明確になり、あらためて勉強になります。

会場に参加している金融機関の環境リスク管理の担当者の反応が大きかったのは、SBAのガイドラインに基づき融資時の環境リスクの調査(いわゆるフェーズ1調査やフェーズ2調査)を実施する環境専門家(Environmental Professional, EP)に求められるプロフェッショナル保険についてです。 続きを読む

シェールガス開発成功の背景(その1)

先週末はアメリカからのシェールガスが2017年にも日本に輸出されることが決定されたというニュースがありました。アメリカでは現在、シェールガスが天然ガス全体の3割強を占めるとされていますが、2015年までに4割を超えるという予想もあります(IHS Global Insight)。

こうしたなか、早くもアメリカでシェールガス開発がここまで成功した背景について分析が始まっており、アメリカのワシントンDCにある環境・エネルギー関連のシンクタンクから、シェールガス・ブームの背景となった政策や技術的な要因をレビューしたレポートが発表されています。(最初のアカデミックレポートとのこと)

http://www.rff.org/RFF/Documents/RFF-DP-13-12.pdf

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ASTM Phase1 E1527-13 案:主要な3つの変更点

土地売買やM&Aの際の環境デューデリジェンスの一環として広く活用されている、ASTMフェーズ1環境サイトアセスメント(ASTM E-1527-05)が8年ぶりに改訂され、年内にASTM E1527-13として発行される予定といわれています。

ASTM のこのフェーズ1基準は、ASTM基準の中でも最も実務的な普及が進んだ基準の一つといわれていますが、2005年版以降、多くの金融機関などが環境リスクマネジメントの方針を明確に打ち出したこともあり、融資や担保評価の際にももっとも広く活用されている環境デューデリ基準の一つとなっています。また、米国の土壌汚染対策の主要法令の一つであるCERCLA (通称スーパーファンド法)の調査方法や免責要件にも正式にリンクしており、今回の改訂に当たっても、米環境保護庁(EPA)でのレビュー期間があるようです。

今年の改訂では、これまでわかりにくいと指摘されていた用語の定義や範囲を明確にするとともに、新たにリスク管理として推奨する揮発性リスクの問題などを明示する予定となっており、改訂される大きなポイントは以下3つであるとアメリカの専門家などが分析しています。 続きを読む

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