中国でのコンプライアンス

世界各国で環境規制の改正や新たな制度化が続いていますが、先週参加した中国でのコンプライアンスに関するセミナーでは、グローバル経済における”規制と競争力”について示唆に富んだコメントがありました。 続きを読む

欧州:2030年にごみ最終処分場ゼロの世界へ

欧州委員会が7月初めに公表したリサイクル社会に向けた提案で、2030年までに一般廃棄物を70%を削減し、実質的に最終処分場をゼロにする目標を打ち出しました。

同時に2030年までに資源効率生産性を30%高めることをめざし、市場原理の活用、インセンティブ、情報交換、自主的取り組みの推進などを進め、使用済みの資源をうまくリサイクルしていく社会を構築することを目指しています。 続きを読む

水産物の持続可能性に向けた取組

ニホンウナギが国際的な自然保護組織(IUCN)から絶滅危惧種として取り扱われたのを契機に、水産物の管理強化に関するニュースが増えています。
持続可能性に配慮した製品や商品に関するラベル認証は、工業製品や建物などのイメージが強いですが、水産物の持続可能性についての共通の評価指標が、欧州・米国企業等で始まっており、来年からガイドラインを運用する方向になってきました。

もともとサプライチェーンの持続可能性を評価するため、大手小売企業などで進められているサプライヤーの持続可能性評価をモデルに、ドイツ国際協力公社(GIZ)が支援をしてはじめられました。このGSSI (Global Sustainable Seafood Initiative)は、100頁を超えるベンチマークツールを開発し、8月まで約2か月のパブリックコメント期間にはいっています。

評価内容は、漁場の水質や化学物質等の利用、えさの種類や管理、漁業による生態系への影響に加え、法的な位置づけや組織のガバナンスなども含まれ、詳細な評価指標になっています。上述したIUCNのレッドリストに関する項目も含まれており、FAO(国連食糧農業機関)のエコラベルガイドラインと比較できるフォーマットも策定されています。 続きを読む

金融庁が『日本版スチュワードシップコード』公表

2月26日に金融庁から機関投資家に対する『日本版スチュワードシップ・コード」が公表されました。
資産運用にあたって企業の持続的な成長を支える「責任ある機関投資家」の諸原則の一つという位置づけです。

内容は、「原則主義」「遵守または実施しない場合は理由の説明(Comply or Explain)」という形をとっており、全体的に基本方針が示されています。環境やCSRに関連する内容は、原則3に示されており、「機関投資家は、企業の持続成長に向けて、企業の社会・環境面の状況を的確に把握すべき」としており、リスク情報という観点で示されています。

昨日の日経ベリタスには、日本の株式保有の3割が外国投資家になっており、本コードに関連して、日本企業の外国投資家への姿勢が変わってきたという記事がでていました。環境、社会、ガバナンスに配慮するESG投資(SRI)の規模は、米国や欧州では日本のSRIの100倍以上になっています。国内外の機関投資家からの環境や社会面の評価が投資に反映されるようになれば、情報開示の経済的な意味合いも深まってくるでしょう。

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欧州議会で非財務情報の開示義務法案が承認

昨日の欧州議会で、環境・社会・労働側面やガバナンスなどの企業の非財務情報の開示を義務付ける提案が承認されました。

従業員500名以上の大企業や上場企業に、情報開示の拡充を義務付ける方向で、今後、国際的な指標などを踏まえて、開示拡充に向けたガイドラインなどが策定されるようです。さらに2018年以降は、大企業の国別の税額・利益・補助金などの開示を義務付けるかどうかも検討することが追記されています。

企業経営の大きな方向性ではありますが、企業にとっては、これまでと違う種類の情報を開示することになりますので、大変な時代になりつつあります。

法案内容については、4月に掲載したブログもご参照ください。

 

バングラディッシュとインドの衣料品工場に関するレポート

今年初めに大惨事があったバングラディシュについて、”従業員の仕事の視点と企業の生産性”の観点からまとめられた報告書が公表されました。インドとバングラディシュの繊維工場を対象にした労働環境と生産性向上に向けた研修プログラムの前後の成果に関する調査結果で、わかりやすい指標をベースに定量的なデータも掲載されています。

ここでは調査結果を分析するために、以下の指標を活用しています。

経営の指標;効率性、出荷率、社員の欠勤率

従業員の指標;手取り給与、時給、退職率

よい経営の指標と、従業員にとって良い仕事の指標は、必ずしも一致しない場合もありますが、以下の研修プログラムを実施した結果、バングラディシュとインドの双方で、生産性が向上し、退職率は大きく減少した結果となっています。

研修プログラムは、以下の4つのほか各種コミュニケーション、意識改革などが含まれているようです。

①人事

②生産:生産効率の向上

③品質

④防災

報告書では、”よい会社は、従業員に対してよい仕事を提供する”というメッセージが様々な側面から出ています。日本ではこれまでCSRの中でも、外部に発信する情報では環境面に重みが置かれていました。環境経営の動きが始められてから20年超となり、グローバル企業では環境経営は、業種や規模、経営方針などで多少の差はあっても、ほとんど当たり前のアジェンダとして定着してきています。

日本企業のグローバル化が加速している昨今、価値観の異なる文化圏のなかで、従業員とよい関係を築いていくことはますます重要になり、CSRの情報発信も少しずつ社会面にシフトしてくるのではないかと思われます。上記報告書は、シンプルな指標を活用していますが、とてもわかりやすい内容になっています。数値、コメント、文章など興味深い内容で、デザインもとても読みやすいので、ちらっといくつかのコメントを見るだけでも参考になります。

SASB 技術・通信セクター素案公表

アメリカのSASB (Sustainable Accounting Standard Board)から技術・通信セクターのサステナビリティに関する開示事項・重要性事項等に関する素案が先週公表されました。来年1月まで90日間のパブリックコメント期間だそうです。

以下の業界が対象になりますので、日本にも先進的なCSRを進めている企業が多い業界です。米国上場企業だけでなく、開示内容や開示方法を決める際の参考になりそうです。

  • Electronic Manufacturing Services & Original Design Manufacturing (電子機器製造サービス等)
  • Software & IT Services (ソフトウエア・ITサービス)
  • Hardware (ハードウエア)
  • Semiconductors (セミコンダクター)
  • Telecommunications (通信)
  • Internet Media & Services (インターネットメディア)

重要性に関する要約表はこちらに掲載されています。

アメリカの公的組織:CSR調達推進の方向

アメリカでは政府系機関や州立大学、州や地方自治体などの公共調達に関する製品、サービスにもサステナビリティを配慮した調達基準が取り入れられる方向になってきました。

先週、公式に発足した”Sustainable Purchasing Leadership Council“(持続可能な調達に関するリーダーシップ協議会)では、今後1年以内に、サステナビリティを踏まえた公共調達方針や実施計画案を策定し、さらに2年以内には、公共調達の選定ガイドラインやそのための電子調達のソフトウエアなどを開発する予定となっています。

グリーン調達から、環境だけでなく労働や社会面、経済性などを踏まえたサステナビリティ調達の方向にシフトしていく大きな動きの一つになりそうです。環境やCSR調達基準が乱立しているので、政府系組織として統一的なガイドラインを策定するなど、この1-2年でいくつかのガイドラインが出てくる模様です。

特にアメリカ発の認証として世界的に広がっているグリーンビルディング認証(LEED)をイメージしているようで、アメリカ政府の購買力を活かして普及を目指しています。アメリカ政府の製品やサービスの購入規模は2.6兆ドル(約260兆円)規模ですので、その影響は非常に大きなインパクトを持つ可能性もあるでしょう。

参加組織には、アメリカの連邦政府調達を取りまとめるGeneral Services Administrationのほか、エネルギー省や環境保護庁などの政府組織、カリフォルニア州、ミネソタ州、サンフランシスコ市やワシントンDCなどの自治体、Office Depotや3Mなどの製造業だけでなく、物流サービスや清掃・廃棄物サービスをする民間企業に加え、大学や大手NPOなどが入っています。UNEP(国連環境計画)のほか、欧州の地方自治体の組織であるProcura+や欧州ベースの組織とパートナーシップを組んでいますが、まだ日本の組織との連携はないようです。

民間企業でのサプライヤー基準など、業界、国や地域を超えて、各種基準を収斂する動きが活発になっていますが、欧米の企業や組織が多くなっています。米国の官公庁とは取引のある日本企業も多いので、この協議会については関心のある方も多いのではないでしょうか。関心がある方が多くいらっしゃれば、FINEVで勉強会なども開催したいと思っていますので、ご連絡ください。

ちなみに8月末に設立シンポジウムを開催するようですが、参画組織のみの参加のようです。

 

 

 

 

 

バングラデシュ惨事後の対応:欧米それぞれに

4月のバングラデシュの建物倒壊事故後、欧州企業が5月に今後の対応に関する同意を発表しましたが(以前のブログご参照)、先週アメリカ企業が”The Alliance for Bangladesh Worker Safety“と呼ばれるアライアンスを発表しました。

GAPやL.L. Beanなどの衣料品ブランドのほか、Sears やMacy、Nordstromなどのデパート、Walmart等に加え、カナダの企業や団体のほか、香港ベースの企業も参画予定としています。今後、バングラデシュの工場に対して年1回の監査をすることとしており、実施内容そのものは欧州のAccordと同じようですが、法的な位置づけではなく自主的な取り組みという形で推進しているところが、欧州のAccordとの相違だといわれています。 続きを読む

不動産の責任投資とESG

週末の日経ヴェリタスに欧米年金基金からの投資マネーを獲得するために、国内のREITや不動産会社でESG評価を受ける会社が増えているという記事がでていました。グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB)2013年は、昨年の24社から30社強に広がる見通しということで、海外での責任投資の動きが国内の不動産市場にも広がりつつあるようです。国土交通省での紹介資料はこちらにあります。

このGRESBの地域別参加会社は欧州が過半を占めているように、2009年から欧州で始まった民間の枠組みのようですが、GRIやCERESなどグローバルな組織や、グリーンビルディングカウンシルなど米国やオーストラリアの組織も参画しています。

2013年の調査内容(Survey)をみると、環境面では、エネルギー利用、水利用、廃棄物、土壌汚染のほか、米国で課題となっているカビ(Mold)などのリスク管理項目や、スマートグリッドの導入割合、サプライヤーや工事請負会社のサステナビリティに関する状況などが調査項目に入っています。エネルギーのパフォーマンス項目だけで18項目あり、全体では20ページのアンケート調査ですので回答そのものもたいへんそうですが、物件毎の個別要素が強い不動産全体の状況が把握できれば、投資や管理する側としても新たな発見や評価軸もでてくるのではないでしょうか。

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