アメリカの公的組織:CSR調達推進の方向

アメリカでは政府系機関や州立大学、州や地方自治体などの公共調達に関する製品、サービスにもサステナビリティを配慮した調達基準が取り入れられる方向になってきました。

先週、公式に発足した”Sustainable Purchasing Leadership Council“(持続可能な調達に関するリーダーシップ協議会)では、今後1年以内に、サステナビリティを踏まえた公共調達方針や実施計画案を策定し、さらに2年以内には、公共調達の選定ガイドラインやそのための電子調達のソフトウエアなどを開発する予定となっています。

グリーン調達から、環境だけでなく労働や社会面、経済性などを踏まえたサステナビリティ調達の方向にシフトしていく大きな動きの一つになりそうです。環境やCSR調達基準が乱立しているので、政府系組織として統一的なガイドラインを策定するなど、この1-2年でいくつかのガイドラインが出てくる模様です。

特にアメリカ発の認証として世界的に広がっているグリーンビルディング認証(LEED)をイメージしているようで、アメリカ政府の購買力を活かして普及を目指しています。アメリカ政府の製品やサービスの購入規模は2.6兆ドル(約260兆円)規模ですので、その影響は非常に大きなインパクトを持つ可能性もあるでしょう。

参加組織には、アメリカの連邦政府調達を取りまとめるGeneral Services Administrationのほか、エネルギー省や環境保護庁などの政府組織、カリフォルニア州、ミネソタ州、サンフランシスコ市やワシントンDCなどの自治体、Office Depotや3Mなどの製造業だけでなく、物流サービスや清掃・廃棄物サービスをする民間企業に加え、大学や大手NPOなどが入っています。UNEP(国連環境計画)のほか、欧州の地方自治体の組織であるProcura+や欧州ベースの組織とパートナーシップを組んでいますが、まだ日本の組織との連携はないようです。

民間企業でのサプライヤー基準など、業界、国や地域を超えて、各種基準を収斂する動きが活発になっていますが、欧米の企業や組織が多くなっています。米国の官公庁とは取引のある日本企業も多いので、この協議会については関心のある方も多いのではないでしょうか。関心がある方が多くいらっしゃれば、FINEVで勉強会なども開催したいと思っていますので、ご連絡ください。

ちなみに8月末に設立シンポジウムを開催するようですが、参画組織のみの参加のようです。

 

 

 

 

 

シェールガスの父

シェールガスの父といわれるGeorge Mitchell氏が94歳で亡くなったというニュースがありました。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM27018_X20C13A7FF8000/

英語ニュースは、Mitchell氏の実績とともに各メディアで掲載されていますが、Mitchell夫妻が設立した財団から多くの情報が公開されています。

昨今のシェールガスブームの基礎を築いた米国の実業家で、大富豪でもあります。(以前のブログに少し記載させて頂いています。)

1980年代にテキサス州のBarnett Shaleでシェールガス開発を始めた頃は、すでに60歳を超えられて、その後シェールガス開発の技術(水圧破砕技術、フラッキングまたはFracturing)がビジネスとして開花したのは90年代です。そして、Mitchell Energyを売却した時期(2000年代初め)は、80歳を超えていたことを考えると、むしろ年齢を重ねた経験や判断力が大きなビジネスを育てる上で重要だったのではないかとも考えます。大きなビジネスには時間もかかるのでしょう。

環境面の課題はありますが、環境保全や持続可能性について高い関心を持ち続けて、1978年に設立された上記財団では様々な環境保全事業が続けられており、Mitchell氏は適切な水圧破砕技術の活用に向けて規制強化を望んでいたという報道もありました。潜在的なエネルギー源を安価に供給できる技術と大きな市場を創出した貢献は非常に大きく、深い敬意とともにご冥福をお祈りしたいと思います。

テキサスに行く機会があったら、Mitchell氏が計画から開発まで手掛けたThe Woodlandsには是非行ってみたいと思っています。

 

 

 

投資家から見たCSRレポート

GRIの新たなガイドラインG4の発行や、今年末に予定されている統合レポートのガイドラインなどの方向性を受け、CSRレポートの改定や、環境報告書(環境・社会報告書など)の内容や構成の見直しを検討している企業が増えているのではないでしょうか。

企業価値に占める無形資産の割合は、過去30-40年で大きく増え、企業価値の8割が無形資産から評価されるようになってきています。一方、従来型の財務報告では、十分に無形資産が説明・開示されていないため、CSRレポートをはじめとする非財務情報の重要性は増しています。

欧州の投資家からみた非財務報告書の現状や課題、期待するものについてまとめられた報告書が公表されました。投資家に対しても評価されやすいCSRレポートを作成するのに参考になりそうです。

報告書では、現状の非財務報告は不十分であるというメッセージが一貫して示されていますが、そのなかでも非財務報告として「最も参考にするのは、各社のCSRレポート」ということで、統合レポートなどが定着するまで当面は、CSRレポートは重要な情報源であることは間違いなさそうです。

また、本調査によると、欧州委員会が今年4月に発表した非財務報告の義務化法案に記載されている内容に加えて、以下の内容を開示することを期待しているとのことです。
(欧州委員会の非財務報告義務化については、こちらをご参照ください) 続きを読む

産業用地の土壌汚染発生率:日米でほぼ同じ

数十年にわたり化学物質などを使用して操業していた工場で、土壌汚染があるかどうかは、国が違っても大きな違いはないようです。

6月に参加したアメリカの会議では、米国の製造・サービス業などで、設備・施設別に、操業年と土壌汚染の関係を調査した研究結果が紹介されました。

調査目的のひとつは、”操業の長さと汚染の発生率に相関関係はあるのか”というものでした。つまり、長く操業している工場には土壌汚染がある可能性が高いのか、という問題提起です。有害物質を使用していた工場などでの汚染発生確率は、施設の種類別に若干相違があるものの、だいたい50-70%(基準超えは30-50%)という発表でした。

また、操業期間と土壌汚染の発生率との相関関係はあまり明確にはでていないという考察でした。(地下水汚染については操業期間の長さが影響するという結果がいくつかありました。)この調査は、比較的小さな統計母数でしたが、土壌汚染の発生確率について、日米でほぼ同じくらいの確率になっているのは興味深いものでした。

日本で同じ目的の研究はみていませんが、日本のデータとしては、土壌環境センターで資料調査後(つまり有害物質を使用していた履歴などがあることが確認された後)に実施された土壌調査では、基準を超える汚染が発覚する可能性は50-60%程度です。(これについては、数値だけの紹介ですが、以前の講演資料に入れています。)

また、以前環境省のブラウンフィールド調査で実施されている、都市計画地域の用途別に東京都のデータをベースにした土壌汚染の発生確率では、工業専用地域では約35%となっています。

発生確率が高いかどうかについては、いろいろな見解があると思われますが、むしろ残りの3-4割にあたる工場では、長年にわたり操業を続けながらも汚染が発覚しなかったことは有益な数字であるように思います。

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バングラデシュ惨事後の対応:欧米それぞれに

4月のバングラデシュの建物倒壊事故後、欧州企業が5月に今後の対応に関する同意を発表しましたが(以前のブログご参照)、先週アメリカ企業が”The Alliance for Bangladesh Worker Safety“と呼ばれるアライアンスを発表しました。

GAPやL.L. Beanなどの衣料品ブランドのほか、Sears やMacy、Nordstromなどのデパート、Walmart等に加え、カナダの企業や団体のほか、香港ベースの企業も参画予定としています。今後、バングラデシュの工場に対して年1回の監査をすることとしており、実施内容そのものは欧州のAccordと同じようですが、法的な位置づけではなく自主的な取り組みという形で推進しているところが、欧州のAccordとの相違だといわれています。 続きを読む

猛暑と気候変動とビジネスリスク考

日本でも猛暑が続く中、原子力発電所の新たな安全基準に基づく再稼働が申請されました。

各地で夏の平均気温が記録的に高まっているということですが、昨年、海水温度の上昇により冷却水の温度規制から、12日間稼働停止になったアメリカ・コネティカット州の原子力発電所では、同様の稼働停止がないように、5月に米国の原子力規制委員会に要望書を提出したということです。

同じ施設内でも海水の深いところから取水している施設の冷却水は、海水の温度上昇が相対的に少なく、稼働停止には至らなかったということですが、原子力関連の水問題について過去40年の案件がまとめられるなど、もともとこの問題がある程度認識されていたことが示唆されています。

NRCは、さらにデータ提供を求めたというコメントが報道されており、結論は来年以降になるため、今夏も同じ問題が再発することも懸念されているようですが、現状では昨年よりは若干気温も低いということです。

詳細はコネティカット州の新聞に記載されています。

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不動産の責任投資とESG

週末の日経ヴェリタスに欧米年金基金からの投資マネーを獲得するために、国内のREITや不動産会社でESG評価を受ける会社が増えているという記事がでていました。グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク(GRESB)2013年は、昨年の24社から30社強に広がる見通しということで、海外での責任投資の動きが国内の不動産市場にも広がりつつあるようです。国土交通省での紹介資料はこちらにあります。

このGRESBの地域別参加会社は欧州が過半を占めているように、2009年から欧州で始まった民間の枠組みのようですが、GRIやCERESなどグローバルな組織や、グリーンビルディングカウンシルなど米国やオーストラリアの組織も参画しています。

2013年の調査内容(Survey)をみると、環境面では、エネルギー利用、水利用、廃棄物、土壌汚染のほか、米国で課題となっているカビ(Mold)などのリスク管理項目や、スマートグリッドの導入割合、サプライヤーや工事請負会社のサステナビリティに関する状況などが調査項目に入っています。エネルギーのパフォーマンス項目だけで18項目あり、全体では20ページのアンケート調査ですので回答そのものもたいへんそうですが、物件毎の個別要素が強い不動産全体の状況が把握できれば、投資や管理する側としても新たな発見や評価軸もでてくるのではないでしょうか。

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