マンション建替えに潜む隠れた問題

来年度の税制改正にマンション建替え推進に対する優遇税制が導入されるというニュースが報道されています。

現在、マンションストックは約600万戸あり、そのうち2割以上は1980年代以前に建てられており、旧耐震基準の問題が指摘されています。

ただ建て替えにあたってもう一つの課題は、土壌汚染問題ではないでしょうか。

土壌汚染対策法では、2010年の改正以降、3000平米以上の土地形質変更の場合、地歴調査を実施したうえで土壌汚染調査を義務付けています。

大型マンションの建て替えの際、この広さに該当し、敷地の土壌汚染調査義務が生じるケースもあると思われます。土壌汚染が発覚すると、調査や浄化の費用のほか、建て替えスケジュールにも影響します。土壌汚染対策費は敷地によっては数億から数十億円になる場合もあり、地下水まで汚染がある場合にはさらに大きな費用になる可能性もあります。

現在、不動産会社や大企業が土地を購入する際、地歴に関わらず土壌汚染調査を実施することは慣例化しています。しかし、土壌汚染対策法ができた2002年以前のマンションでは、ほとんど敷地の土壌汚染調査は実施されていないでしょう。

いくつか過去の建て替え事例がでていますが、いずれも2010年以前であったり、条例がなかった地域の案件であったりします。米国や欧州では、一定の条件のもと、住宅用敷地について汚染調査費用や土壌浄化対策費の優遇措置等がありますが、国内ではまだ政策として盛り込まれていません。

先進国では現在、土壌汚染そのものによる健康被害はほとんど報告されておらず、イギリスなどではその結果2012年以降、土壌汚染規制の緩和も進められています。マンション建て替え推進政策にあたっては、土壌汚染関連の優遇措置の追加も重要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。