海外環境セレクト(2020年4月)

アメリカの環境ビジネス、環境規制、ESG情報、その他各国及び国内の関連情報のなかで弊社が選んだ最新情報を概説し、情報源をお知らせします。

PFAS関連

アメリカPFAS法2019:国防省国家授権法2020年。
アメリカでは、毎年国防省の活動方針や予算を規定する国家国防授権法(The National Defense Authorization Act, NDAA)が制定されます。この、2020年版(NDAA2020)において、PFASに関する重要な取り組みが規定されました。このNDAA2020は、2019年12月20日に成立し、PFASに関して一つの独立した項目(セクション)として取り上げており、PFAS法2019として、飲用水や報告義務を課す施策等が含まれています。

 

アメリカ国防省:2020年3月 PFASタスクフォースの進捗レポートを公表。
国防省では、PFASは国全体で取り組むものとして、タスクフォースの進捗レポートを公表しています。後半には米国内の国防省の施設で潜在的なPFAS利用や漏洩がある場所のリスト数百カ所が記載されています。

https://www.defense.gov/Explore/News/Article/Article/2111631/dod-releases-pfas-task-force-progress-report/

【タスクフォースの概要】

国防省では、1970年代から水成膜泡消火薬剤(Aqueous film forming foam, AFFF)を燃料消火目的で使用しており、ここにはPFOAとPFOSが含まれている。国防省の事業に関わる人員の健康と安全を確保するため、以下の3つの目標に焦点をあててこのタスクフォースを実施している。

  • 現在使用しているAFFFの軽減及び撤廃
  • PFASの健康影響を理解する
  • PFASに関連する汚染浄化責任に対応する

国防省は、防衛調達基準を更新し、今後の消火器に関してPFOS及びPFOAが含まれないものを採用することを決定した。(調達方針の詳細は、MIL-PRF-24385参照https://quicksearch.dla.mil/qsDocDetails.aspx?ident_number=283209)また、今後フッ素フリーの消火薬剤の研究開発を進めるため、2019年11月15日に産業界、国際機関等とのタスクフォース会議を開催し、2025年度までに4900万ドル(約54億円)の研究開発、試験、評価の投資をする。

国防省は2024年10月1日までに軍用地におけるAFFFを廃止すると共に、PFASを使用しないPFASフリーの消火剤をすべての海軍における調達要件に2023年10月1日までに加える。

 

【国防省のPFAS汚染に対する浄化対策に関して】

国防省の活動に起因するPFOS/PFOAの飲用水のリスクが環境保護庁(EPA)が推奨する70ppt(parts per trillion)を超える場合には、短期的な取り組み(ボトル入り飲用水の提供やフィルターの利用等)と長期の取り組み(自治体との連携、フィルターシステム)について積極的に行う。それ以外の浄化対策については主に地下水内のPFASに関する浄化活動を進める。当面は、スーパーファンド法(CERCLA)に基づく懸念サイトに関する調査を継続する。タスクフォースとしての活動は下記が含まれる。

・DODの浄化プログラムにおいて、PFASの調査及びEPAのPFOS/PFOA、PFBSの毒性評価値を使用する際の一貫したアプローチを確実にするよう技術ガイドラインを明確にする。

・実際の、または、計画している調査及び浄化義務と費用見積もりを報告する。

・既知及び懸念されるPFAS漏えいに関する施設の浄化進捗と飲用水の対応について四半期毎の報告。

・飲用水以外の媒体に関するPFAS濃度の分析方法の活用に関するガイドライン。

 

また、タスクフォースでは、PFASに関するその他の環境影響を考慮し、以下の分野についてガイドラインを作成するかどうかを評価する。

・米国内外において、PFASを含まれる土壌やフィルターなどの廃棄方法

・雨水、建設工事に伴う排水等を含むPFASを含む排水管理

・PFASを含む生物固体や汚泥の取扱い

国防省は、環境保護庁(EPA)、保険福祉省、行政管理予算局、連邦航空局、農務省、NASA、エネルギー省、米国地質調査所、FDAなどと連携して取り組むとしている。

 

アメリカ環境保護庁

PFASアクションプラン更新(2020年2月)

環境保護庁が2019年2月に公表したPFASアクションプランを更新しました。

2018年11月認定していた分析537.1に加え、2019年12月にEPAが飲用水のPFAS分析方法(分析533)を新たに認定したことにより、分析可能な対象物質が、29物質になりました。

2019年12月に地下水浄化ガイドラインを発行しているほか、今後、有害物質管理法(TSCA)、スーパーファンド法(CERCLA)、資源保護回復法(RCRA)等で規制することを検討するとしています。

PFASに関して、EPAは媒体の縦割りを超えた初めての取組を進めており、欧州各国、オーストラリア、日本とも情報交換をしているとの記載もありました。

https://www.epa.gov/sites/production/files/2020-01/documents/pfas_action_plan_feb2020.pdf

 

欧州PFASレポート

PFASの健康影響、主な排出源、現在の確認状況などを整理し、すでに法制化が進められている国や今後の欧州としての取り組みの方向性が整理されています。4,700種類を超えるPFASは広範囲の用途に使用されており、人体や環境に蓄積され、欧州各地で確認されており、一部に濃度の高い汚染地域もある。個別物質をすべて評価することは難しいため、今後、予防的リスク管理のアプローチを進める方向のようです。

【飲用水】

飲用水については、EU飲用水指令(EU Drinking Water Directive)で規制知ることが提案されている。飲用水の基準値は、PFASのグループ基準値を0.5マイクログラム/リットル、個別の16種類のPFAS基準値を0.1マイクログラム/リットルとして提案されています。

【製品含有規制】

REACH規制・・・2020年7月4日から、PFOA(25ppb超)、PFOA関連物質(1000ppb超)の製品が禁止されます。

https://echa.europa.eu/documents/10162/7a04b630-e00a-a9c5-bc85-0de793f6643c

【その他】

表層水でPFAS汚染が確認されている国:オーストリア、デンマーク、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン

土壌の規制値が規定されている国:デンマーク、ドイツ、オランダ、スウェーデン

布製品の規制値:ノルウェー

食品接触素材の規制値:デンマーク

https://www.eea.europa.eu/themes/human/chemicals/emerging-chemical-risks-in-europe

 

EUでPFASの45物質を規制提案

欧州化学品庁(European Chemical Agency)は、PFASに関連するperfluorohexanoic acid (PFHxA) and related substancesの45物質をREACHに基づき規制する提案を公表しました。パブリックコメントが2020年9月25日まで提出できます。

https://echa.europa.eu/restrictions-under-consideration/-/substance-rev/25419/del/50/col/staticField_-104/type/desc/pre/1/view

 

OECD各国のPFAS規制状況

日本を含めた各国のPFAS規制状況がまとめられています。

https://www.oecd.org/chemicalsafety/portal-perfluorinated-chemicals/countryinformation/

 

3M社がPFASに関する情報公開を拡充

3M社が自社のPFASに関する過去の研究開発やレポート、調査や浄化などを含めた関連情報を“3M Research Clearinghouse”として公開しています。

3M社はPFASの製造業者としてDuPont社とならび、多くの訴訟などに対応しており、2018年にはミネソタ州で8.5億ドル(約900億円)の和解をしているほか、最近も他州で浄化等の和解をしています。

こうしたなか、PFASへのコミットメントとして、様々な情報開示を拡充しており、Clearinghouseを公開したようです。過去の情報が多いようですが、分析、浄化などをする企業や研究者には有用な情報もあるとの意見もあるようです。

https://www.3m.com/3M/en_US/pfas-stewardship-us/testing-and-remediation/clearinghouse/

 

エネルギー

米国U.S. Solar Market Insight2019(下記web) によると、太陽光発電の2019年の新規導入は13.3ギガワットで、2019年は米国の新規発電量の4割になっており、全体で77.7ギガワットで1400万戸の住宅の電力供給にあたる発電量となっています。

https://www.seia.org/news/solar-accounts-40-us-electric-generating-capacity-additions-2019-adds-133-gw

 

環境規制関連

アメリカ:TSCA(有害物質管理法)に基づく化学物質の届出に関する新たなルール案が公表されました。

https://www.epa.gov/chemical-data-reporting

新型コロナウィルス関連

米国環境保護庁(U.S.EPA)が新型コロナウィルスに効果のある消毒剤リストを更新しています。

2020年3月3日に、EPAは新型コロナウィルスに効果のある消毒剤リストを公表し、各種メディアが取り上げていましたが、先週更新し、登録番号、製品名、メーカー等に加えて、消毒時間(例えば30秒、1分、5分等)も追記されました。現在280種類を超える消毒剤が掲載されています。

https://www.epa.gov/pesticide-registration/list-n-disinfectants-use-against-sars-cov-2

 

ESG関連

金融庁が機関投資家等の指針について示した「スチュワードシップコード」(2014年策定、2017年改訂)が再改訂され、サステナビリティ(ESG)を考慮した運用において企業等との対話などを進めることを明記しました。

改訂版(変更点を示したもの)は以下にあります。

https://www.fsa.go.jp/news/r1/singi/20200324/02.pdf

 

*上記規制情報等は公開された時点の情報です。現在、新型コロナウィルスの影響で、米国を含めて法執行や規制等について一時的な猶予などが出ている領域もあり、今後、変更の可能性もあると考えられます。

弊社では情報の正確性・信頼性に努めておりますが、上記情報の正確性を保証するものではありません。上記情報に基づくご判断は各自で実施頂けますようお願いいたします。

(複写・転載はお控えください)