海外環境セレクト(2020年6月)

アメリカの環境ビジネス、環境規制、ESG情報、その他各国及び国内の関連情報のなかで弊社が選んだ最新情報を概説しています。(複写・転載はお控えください)

(概要)

  • 新型コロナウィルスによる外出自粛が徐々に解除され、コロナ後の経済再生策が出されてるようになっています。産業停止の影響やウィルスの環境影響、予知の研究なども進んでいます。
  • 経済の一時停止に伴う規制執行の猶予や予算の削減などがある一方、すでに一部の州でTSCAで評価中のトリクロロエチレンの禁止(2022年6月施行)などの動きも出ています。
  • 今回の危機を踏まえて、現状の社会におけるリスクや脆弱性を再評価する動きも出ているようです。

新型コロナウィルス関連

アメリカ省庁で消毒や検査、自然への影響など広範な調査研究

アメリカ環境保護庁では、新型コロナウィルス関連の調査研究を拡充しています。トランプ政権が3月下旬に成立させた新型コロナウィルス経済対策法(the 2020 Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security (CARES) Act)に基づき、下記の調査を実施しています。

  • 環境浄化と消毒:紫外線(UV)、オゾン、湿気等によるウィルスの影響を調査すると共に、静電スプレーや噴霧の消毒効果効果についても調査しています。すでにEPAでは消毒薬のリストなどを公開していますが、さらにその他の消毒効果に調査研究のようです。
  • 廃水でのウィルス検知:廃水に含まれるウィルス量によって、地域全体にどの程度ウィルスが広がっているかについての調査です。*日本でも東京都等が同様の調査を進めるとの報道がありました。
  • 唾液抗体検査の開発:唾液による検査が可能になると、地域全体の感染状況の確定に有用な情報が得られるとしています。
  • https://www.epa.gov/newsreleases/epa-expands-research-covid-19-environment

 

また、国家海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration, NOAA)では、新型コロナウィルス対応によって、産業活動が停止し、大気汚染等が減少したことによる大気環境、海洋環境等への影響調査を実施しています。NOAAは商務省の管轄機関の一つですが、産業活動や交通量が減少したことによる影響を調査することによって、今後の気候変動や天候予測、太陽光の地上への到達への影響等についても評価していくとしています。

https://research.noaa.gov/article/ArtMID/587/ArticleID/2617/NOAA-exploring-impact-of-coronavirus-response-on-the-environment

 

各国の廃棄物事業におけるCOVID-19対応

国際廃棄物協会では、COVID-19に対する各国の廃棄物管理の対応をまとめたWebを作っています。

https://www.iswa.org/iswa/covid-19/#c7983

 

使い捨てプラスチック利用増・禁止延期の動き

イギリス(United Kingdom)は、新型コロナウィルスへの対応のため、使い捨てプラスチックストロー、綿棒、ステアの禁止を6か月延期(2020年10月に施行予定)

https://deframedia.blog.gov.uk/2020/04/16/ban-on-plastic-straws-stirrers-and-cotton-buds-delayed-due-to-coronavirus-outbreak/

 

カリフォルニア州の予算削減:気候変動関連の予算も削減へ

カリフォルニア州知事は、5月14日付けで、約2兆円削減する州予算の修正を行いました。新型コロナウィルスにより、2021年まで州予算が6兆円近く不足するおそれがあるとして、当初2020-2021年予算を当初の2,220億ドル(約24兆円)から、2,033億ドル(約22兆円)に減額しています。

新型コロナウィルスにより、2020年1月の予算策定時の状況から世界は異なった状況にあり、国全体の緊急時になったとして、緊急時の予算という表現がされています。減額対象には、気候変動ファンドや、持続可能な地下水規制に関する支援、森林火災に関する住宅支援等の予算も含まれています。

http://www.ebudget.ca.gov/FullBudgetSummary.pdf

 

アメリカ会計検査院(General Accounting Office, GAO)化学工場へのサイバー・アタックの脆弱性の改善必要性を指摘

アメリカ会計検査院は、国家安全保障省(Department of Homeland Security)の化学施設の反テロリズム基準(CFATS)プログラムのガイドラインが10年以上更新されておらず、サイバーアタックの脆弱性があるとして、その定期的なデータの確認や研修などを必要とする報告書を発行しました。

対象となる施設は全米に約3,300か所あり、企業のオフィスや、化学工場、化学品の保管施設などが含まれています。

https://www.gao.gov/assets/710/706972.pdf

(参考)CFATSガイダンス

https://www.cisa.gov/sites/default/files/publications/cfats-rbps-guidance_508.pdf

CFATSプログラム

https://www.cisa.gov/chemical-facility-anti-terrorism-standards

 

EPAサイエンスパネル:COVID-19のサンプル方法の提示をEPAに推奨予定

EPAの設置する科学者等の委員会では、COVID-19の環境中の分析に関するサンプル方法等を提示することなどを推奨する報告案を開示しています。

https://yosemite.epa.gov/sab/sabproduct.nsf/WebBOARD/69773E5F2988FF9685258567006F7B10/$File/SAB+COVID-19+Review+Panel_Draft+Report+for+Quality+Review_05132020_rvs.pdf

 

 

 

環境ビジネス関連

アメリカ環境保護庁の汚染地再生に関するハンドブック(2019)

日本の空き家対策で紹介されているランドバンク(自治体が滞納不動産等を取得し、再生する枠組み)も紹介されていました。

https://www.epa.gov/sites/production/files/2019-12/documents/revitalization_handbook_final_2019.pdf

 

*国内でも国土交通省が、2020年5月26日に土地基本方針を公表し、今後の所有者不明土地等についてランドバンク等の活用を進める方針がでています。

https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo02_hh_000154.html

 

バフェット氏のアメリカ最大規模の太陽光発電プロジェクトが承認

2020年5月、バークシャーハサウェイ社の関連会社が実施するアメリカ国内で最大規模、世界でも8番目の大きさとなる690メガワットの太陽光発電プロジェクト(Gemini Solar Project)がネバダ州ラスベガス北部で実施することが承認されました。

本プロジェクトは、米国国務省、土地管理局の管理する国有地内のプロジェクトで、もともとトランプ政権による国有地のエネルギープロジェクトへの利用に関する規制緩和により可能になったとのことです。ネバダ州とカリフォルニア州南部の住宅に供給されるエネルギーは、夜間の供給に備えて蓄電システムを備えており、今後両州の再生可能エネルギー目標にも役立つと言われています。2年後の竣工予定のようです。

https://www.permits.performance.gov/permitting-projects/gemini-solar-project

*上記の許認可のページは、複数の法律の許認可進捗状況について確認できるページで、このGemini Solar Projectも出ていますが、とても見やすいページです。

アメリカ:インフラ許認可進捗管理のホームページ

https://www.permits.performance.gov/

 

 

ESG関連

(参考)COVID-19後の経済政策について

ノーベル賞受賞の経済学者(ジョセフ・スティグリッツ)等を含めた著名な経済学者が発表したオックスフォードレビューのレポートで、COVID-19後の経済対策と気候対応を実現する5つの優先分野が確認されています。G20の財務大臣や経済学者、約230名へのアンケート調査をまとめたもので、レポートの結論として、経済対策と気候対応を両立する5つの分野(クリーンなインフラ、建物改築、教育研究、自然資本への投資、クリーン技術開発)が示されています。

経済対策として有用な上位5項目

  • 家計と中小企業への財政支援
  • ヘルスケア部門への投資
  • 直接的な必需品の提供
  • 対象部門へのキャッシュ移転
  • 災害対策

気候対策として有用な上位5項目

  • クリーン技術開発
  • クリーンエネルギーのインフラ投資
  • グリーンスペース・自然インフラへの投資
  • 建物改築
  • 災害対策

https://www.smithschool.ox.ac.uk/publications/wpapers/workingpaper20-02.pdf

 

イングランド銀行:金融機関への気候変動に関するストレス・テストを2021年半ばまで延期へ

イングランド銀行では、金融機関に対する気候変動対応リスクを評価するストレステストを2020年半ばから実施することを発表していましたが、COVID-19への対応を優先するため、2021年半ばまで延期することを5月7日に発表しました。

https://www.bankofengland.co.uk/prudential-regulation/publication/2020/pra-statement-on-prioritisation-covid19

 

国連の責任投資原則(PRI)欧州グリーンディールの推進に向けた推奨事項を公表

投資家に対し、欧州の進めるグリーンディール(汚染ゼロ、適正価格の安全なエネルギー、よりスマートな輸送、高品質の食品)への支援等を通じ 世界のサステナビリティの取り組みを推進することを推奨しています。

https://www.unpri.org/sustainable-markets/investor-priorities-for-the-eu-green-deal/5710.article

 

 

海外環境規制

中国 固形廃棄物管理法の再改正が2020年9月1日~施行

中国の廃棄物管理に関する法律が再改訂され、廃棄物管理全般の強化、記録やトレーサビリティの確保と共に、段階的に海外からの固形廃棄物の輸入をゼロにするとしています。

経済のグリーン化に向けて2019年12月に再改正案が出され、2020年4月29日に採択され、2020年9月1日から施行される予定となっています。

改正部分の概要について

http://www.mee.gov.cn/ywdt/hjywnews/202005/t20200504_777706.shtml

法律全体

http://www.moj.gov.cn/Department/content/2020-05/06/592_3248103.html

 

インド:環境影響評価を14年ぶりに改正する方向

2020年3月、インドの環境森林気候変動省は、環境影響評価に関する通知を発行しました。2006年以来、14年間実施されてきた環境影響評価では、建設プロジェクト等における環境クリアランス制度として、プロジェクトの規模や種類に応じ、設立許可(Consent to Establish, CTE), 操業許可(Consent to Operate)などの許可と水や大気の法律に基づく事前許可が必要になっています。

しかしながら、インドの深刻な環境汚染等について、これらの許可等を承認する機関の独立性等について課題があることも指摘されていました。今回の改正では、ガバナンスや適正な取り組みにつながるか、様々な意見が出されている状況です。

http://moef.gov.in/wp-content/uploads/2020/03/Draft_EIA2020.pdf

 

ミネソタ州で溶剤トリクロロエチレンを禁止。全米州として初、2022年6月~施行。

ミネソタ州では、2022年6月1日からトリクロロエチレンの溶剤の使用を禁止する州法を決定しました。中小企業等一部に経過措置(低利融資等を含む)があるようです。

トリクロロエチレンは、ドライクリーニングや工業用に多用されていますが、アメリカ環境保護庁では、改正された毒性物質管理法(旧:Toxic Substance Control Act, TSCA)、2016年に改正されたローゼンバーグ化学物質安全法(The Lautenberg Chemical Safety Act of 2016、に基づき、安全性のレビューを行っています。

ミネソタ州の法令

https://www.revisor.mn.gov/bills/bill.php?f=SF4073&y=2020&ssn=0&b=senate

TSCAでレビューされている化学物質

https://www.epa.gov/assessing-and-managing-chemicals-under-tsca/chemicals-undergoing-risk-evaluation-under-tsca

 

PFAS関連

 

Swix Sport社がPFAS輸入で罰金

スキー用品などを取り扱うSwix社は、6種類のPFASを違法に輸入したとしてアメリカ環境保護庁に罰金(約4000万円)を支払い、追加的に1.1億ドルを支出し、2020年から2022年までスキー用ワックスにPFASを撲滅するための活動をすることに合意しました。

https://yosemite.epa.gov/oa/EAB_Web_Docket.nsf/RecentAdditionsv2/61788F0B22745FDE8525856700681EA1/$File/Swix%20Sport%20Final%20Order%20Consent%20Agreement%20and%20CoS%20with%20MKL%20Signature.pdf