地域社会の課題を解決するCSR

2014年2月

日本にCSRの取組と言葉が広がり始めたCSR元年といわれる2003年から10年が経過し、国内にもCSRという言葉が徐々に定着し始めた。昨年、経済広報センタ―が実施した調査では、一般に調査した結果、約6割がCSRの意味を理解しているという。

CSRの言葉の使い方は、狭義の地域貢献、社会貢献の意味合いから、広く企業の経済・社会・環境に対する取り組みを指す意味まで、その言葉の前後関係や状況によって異なっている。しかし昨今、CSRの取組は単に広告宣伝(PR)や社会貢献ではなく、企業の事業と直結する経営全体をさし、組織の社会的位置づけであるという考え方が世界的にも広がりつつある。

この大きな背景には、社会の様々な問題解決に企業の力が不可欠になっていることが挙げられる。日本国内でも、震災復興や災害対策、高齢化社会への対応や自然環境の保全など様々な課題があるが、世界全体にはより深刻な問題が数多く存在している。

現在、世界人口の約4割にあたる24億人が水や電気、廃棄物処理などの基本的な生活インフラがない場所で生活をしており、貧困や安全、環境汚染、治安などの課題がある。世界の人口は今後も増加を続け、2030年には水や食料は50%増加、発電規模は80%増加する一方、65歳以上の高齢人口は約5割増加することと予測されている。

これらの社会問題は、政府の取組だけでは解決することは難しく、企業の技術やサービス、人やノウハウ、流通経路や資産、金銭も含め、数多くの資源や知恵が必要になっている。大企業は大きな資本と共に、人や交通、拠点などのネットワークを持ち、地域社会と連携することで様々な社会的な課題の解決が可能になっている。

事業の本業を通じて、地域社会の環境や社会問題に解決できる取組を進めることがCSRにおいて不可欠になっている。

例えば、金融業においては、社会性の高い事業や企業、環境保全の優れた取り組みに投資を行う責任投資(Responsible Investment、又は社会的責任投資;SRI)と呼ばれる領域がある。企業の財務状況だけでなく、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の要素に配慮した投資であり、ESG投資とも呼ばれている。ESGに配慮した投資は、世界全体では400兆円を超える規模であるが、その大部分が欧州や米国になっている。

日本では、環境に配慮した企業への投資を進めるエコファンドという形で90年代に金融商品が開発された。しかしながらその規模は、現在でも欧米の100分の一以下である1兆円未満と小さな規模に留まっている。こうしたなか、一昨年国内で“21世紀金融行動原則”が策定され、現時点で銀行、信用金庫、証券、保険会社等、全国にある約190の金融機関等が署名を行っている。

預貯金や保険金の資産運用は、各企業の資産運用方針に沿った投融資が行われるが、社会や環境に優れた取り組みに対する投資が増えることにより、持続可能な社会に貢献する事業や企業を金銭面から支えることになる。 目に見えにくいお金の流れを通じて、社会を大きく変革する力をもっているといえるだろう。

*本稿は、2014年2月に通信新聞に掲載された内容を、同社承諾のもと一部編集して転載しています。