アメリカの中小企業融資の新ガイドライン:2014年1月1日から施行

 

2013年9月に発行された、米国中小企業庁(SBA)の融資保証に関するガイドラインが2014年1月1日から施行されます。

以前のブログにも紹介した中小企業庁の融資保証等を受ける際のガイドラインですの改訂版です。

前回の紹介から環境方針は変更がありませんが、その他の手続きに大きな変更があるようで、その一つは提出書類の電子化です。各種届出はE-Tranと呼ばれるシステムに電子ファイルとして提出することが求められます。(その他重要な変更もあるようですので、そちらにご関心の方はガイドライン等をご参照ください)

環境方針は、すでに今年3月から施行されていますが、融資対象が、環境影響のある業種(別紙にNAICコードが規定されています)の場合、融資規模に関わらず、地歴調査・質問状や政府記録確認を含むフェーズ1調査から実施し、融資機関は”免責同意書”(SBA Environmental Indemnification Agreement)を添付しなければならないことになっています。

この同意書は全20ページあり、環境調査に関する専門用語の定義だけで4ページになります。借り手側は、環境調査(ASTMフェーズ1)や関連情報を提出することになり、故意の隠ぺいなどには罰金100万ドル(1億円)、禁固30年までの罰則も明記されています。厳しいですね。

フェーズ1調査は、ASTM フェーズ1環境サイトアセスメント(ASTM E1527)の2005年版を規定していますが、先月改訂された13年度版も実務的には受け付けるという方針のようです。

米国では、土壌汚染の責任については、無過失・連帯責任を原則とするため、銀行など融資機関でも融資の際に土壌汚染調査フェーズ1、フェーズ2を独自に実施することが多くありますが、今回のものは、中小企業の融資にもそれを適用することになったものです。

これまではガソリンスタンドやクリーニング業など、中小企業の融資の際には、環境調査が実施されないことも多かったということですが、今回の中小企業庁のガイドライン改定により、中小規模の融資における環境リスク調査が広がることが予想されています。

ASTMの改訂については先日BELCAさんで講演させていただいた資料に概要を入れていますのでご参照ください。

 

 

1月のFINEV座談会

1月のFINEV座談会テーマは以下を予定しています。

【テーマ】

シンガポールの環境政策とグリーン戦略について

“クオリティ国家シンガポールに学ぶところは何か”

・自由化後の電力市場とプレイヤー

・スマートシティ・工業団地建設を進めるグローバル企業

・シンガポール証券取引所のサステナブル戦略

・グリーンビルディング戦略と人材育成戦略

 

ご参加希望の方はこちらからご連絡ください。詳細をご案内申し上げます。

欧州議会で非財務情報の開示義務法案が承認

昨日の欧州議会で、環境・社会・労働側面やガバナンスなどの企業の非財務情報の開示を義務付ける提案が承認されました。

従業員500名以上の大企業や上場企業に、情報開示の拡充を義務付ける方向で、今後、国際的な指標などを踏まえて、開示拡充に向けたガイドラインなどが策定されるようです。さらに2018年以降は、大企業の国別の税額・利益・補助金などの開示を義務付けるかどうかも検討することが追記されています。

企業経営の大きな方向性ではありますが、企業にとっては、これまでと違う種類の情報を開示することになりますので、大変な時代になりつつあります。

法案内容については、4月に掲載したブログもご参照ください。

 

持続可能性報告と財務報告の一体化に向けて

サステナビリティ報告、CSR報告書と財務報告の一体化となる統合報告に向けた動きは国内でも進んでいますが、先週、欧州で財務責任者(CFO)が持続可能性に向けて議論するCFO(財務責任者)の会が発足しました。

イギリスのチャールズ皇太子のもとで、大手企業10数社のCFOが集まり、今後、環境や社会面の課題解決やビジネスをどのように企業戦略や財務報告に結びつけるかという議論を進め、統合報告や自然資本に関する具体的なガイドラインの作成などに取り組むとのことです。

今後1年での実施事項は以下の通りとなっています。

  • 資本的支出の評価に持続可能性の視点を入れるなど、意思決定の透明化に向けたガイドラインの作成
  • 自然資本、社会資本の評価や計測の方法の開発に向けた貢献
  • 持続可能なビジネスモデルに関する投資家の関わりの改善

統合報告や自然資本の動きも踏まえてか、または政策的な影響の大きい公益事業のためか、水やユーティリティ、不動産関連などインフラ系企業が多い印象です。メンバーにはイギリス企業だけでなく、フランスのダノンやアメリカのWalmart等も含まれています。

日本では、環境報告→CSR報告→統合報告と徐々に移行している企業が多いなか、現状では、CSR報告書を複数部署で作成している企業が多いと思われます。財務責任者がCSRや環境・社会面の開示について考える会というのは、まだあまり聞いたことがありません。

少し先のことのように思われますが、CSR報告と財務報告が本当の意味で統合するためには、やはり財務責任者の見方は非常に重要で、それによって初めて本当の意味の持続可能なビジネスになるのでしょう。イギリスではこの動きに本格的に取り組んでいるという見方ができそうです。

 

マンション建替えに潜む隠れた問題

来年度の税制改正にマンション建替え推進に対する優遇税制が導入されるというニュースが報道されています。

現在、マンションストックは約600万戸あり、そのうち2割以上は1980年代以前に建てられており、旧耐震基準の問題が指摘されています。

ただ建て替えにあたってもう一つの課題は、土壌汚染問題ではないでしょうか。 続きを読む

エコチル調査

昨日富山大学医学部の先生から、環境省のエコチル調査についてお話を伺いました。全国10万人を対象に、母親と生まれてくる子供の環境影響などを分析する調査だそうです。

外部環境の影響については限定的な範囲に行われるようですが、どのような食べ物を食べたか、それによる子供の疾病率の影響などを長期的に詳細に調査し、化学物質の暴露経路が子供の発育や疾病にどのような影響をもたらしているのかを、調べていくもののようです。

最近、欧州では土壌汚染の健康影響などの調査が進んでおり、土壌汚染そのものからの健康影響はあまり明確でないという結果もでています。

”環境”分野はとても広いので、異分野の専門家の方々とお話しさせていただくと大変勉強になると同時に、様々な側面の研究が進んでいることを知り、とても新鮮に感じます。

調査研究によって、環境汚染の適切なリスク管理が進むと同時に、不安や心配も解消されるとよいですね。

 

 

シェールガス開発に対する環境リスクへの理解と懸念

アメリカのいくつかの地域で、シェールガスに関する反対運動が行われていますが、ワシントンDCのシンクタンク(RFF)がテキサス州とペンシルバニア州の住民や環境NGOに対してアンケート調査をした内容がニュースで発表されています。

この2つの州はいずれもシェールガス産出で経済的にも大きな効果を受けている州ですので、他州との相違はあるかもしれませんが、以下のような内容が伝えられています。

・両州は、基本的にシェールガス開発については前向きである。

・ただ、地下水や表層水、生態系や大気汚染等の影響があることは懸念しており、シェールガスの開発や産出を続ける事業者が、サステナブルな開発を続けてくれることを望んでいる。

・シェールガス開発の環境リスクについてよく理解している住民や環境NGOは必ずしも多くない。40%位の人数は、環境リスクについてよく理解することで、意見が変わる。

・現在、シェールガスへの反対運動が増えているのは、住民の事業者に対する信頼が低いため。事業者としてリスク管理をすることに加え、信頼回復が重要。

その他、細かな内容の中にも興味深い説明がありました。先般のブログでも紹介したコロラドでの反対運動が、どのくらいまで広がるかはわからないが、全米に広がる可能性は少ないのではないかということでした。引き続き、いろいろな変化がありそうです。