海外環境セレクト(2020年7月)

アメリカの環境ビジネス、環境規制、ESG情報、その他各国及び国内の関連情報のなかで弊社が選んだ最新情報を概説しています。(複写・転載はお控えください)

(概要)

  • 各国・地域で新型コロナウィルス後の経済政策として環境配慮・グリーンリカバリーへの支持が増える一方、数か月に及ぶ外出自粛の経済・社会影響も顕著になり、再生可能エネルギー業界でも影響がでています。
  • アメリカではグリーン水素、再生可能型水素発電等のプロジェクトが複数始まっています。
  • PFAS、化学物質、マイクロプラスチック等の規制関連の動きも続いています。

新型コロナウィルス関連

アメリカ再生可能エネルギー:COVID-19で約10万人が雇用喪失

アメリカ再生可能エネルギー協議会によると、COVID-19により再生可能エネルギーのサプライチェーンが大きな影響を受けており、許認可が遅れ、部門全体で失業率が大幅に高くなっています。

今後の継続発展のために政策支援の必要性を表明しています。

https://energycommerce.house.gov/sites/democrats.energycommerce.house.gov/files/documents/Witness%20Testimony_Wetstone_06.16.20.pdf

 

ニューヨーク州:新型コロナによる未払いの顧客への電力や水供給停止を禁止

ニューヨーク州は、新型コロナウィルスによる経済危機によって電力料金や水道料金を支払えなくなった顧客に対して電気や水供給を停止することを禁じる州条例を発効しました。支払いできない顧客は、一定期間、電力会社や水供給をする自治体等と調整することができる機会を確保するとしています。

https://www.nysenate.gov/legislation/bills/2019/s8113/amendment/a

 

カリフォルニア州:新型コロナウィルスにより停止していた使い捨てプラスチック規制の停止期間を延長

カリフォルニア州では、新型コロナウィルスによる感染予防のため、使い捨てレジ袋などへの課金を6月30日まで停止していましたが、この措置を8月20日まで延期しました。

カリフォルニア州で感染者が増加していることが背景のようです。

https://www.gov.ca.gov/wp-content/uploads/2020/06/6.22.20-EO-N-70-20.pdf

 

ドイツ・フランス:COVID-19の経済政策をグリーン・リカバリーに、また国境CO2税を共同提案

5月18日、ドイツとフランスは、COVID-19からの欧州の復興計画の基本は2019年12月に公表された欧州グリーン・ディールであるとして、国境移動にCO2課税を課すことを共同文書で提案しました。

別途、欧州の国境炭素税は、2021年に実施の方向とも伝えられています。

https://www.bmu.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/Klimaschutz/declaration_meseberg_2020_bf.pdf

 

イギリス:ジョンソン首相、グリーン・リカバリーが不可欠との考え

イギリスはCOVID-19後の経済政策として、グリーンリカバリーが不可欠と考えており、クリーンエネルギー、オフショア風力発電、電気自動車への高速充電ハブなどへの投資を含めた予算を検討しているとのことです。

ジョンソン首相は、2050年までにイギリスが温室効果ガス(GHG)の排出をネットゼロにする法律を2019年6月に主要国として初めて制定しており、1990年比で80%の排出削減を目指しています。

(2019年の法律制定時の公表文書は以下)

https://www.gov.uk/government/news/uk-becomes-first-major-economy-to-pass-net-zero-emissions-law#:~:text=New%20target%20will%20require%20the,to%20net%20zero%20by%202050.&text=The%20target%20will%20require%20the,80%25%20reduction%20from%201990%20levels.

 

 

環境ビジネス関連

 

アメリカ石油ガスの掘削井戸の浄化推奨について

新型コロナウィルスによる産業活動の停滞と原油安によって、アメリカのシェール関連をはじめとする石油やガス会社の経営破綻が増えています。掘削井を適切に処置しないで放置されるケースが増えており、すでにわかっているだけで全米で56,000の井戸が放棄されています。これらの井戸から、メタンなどの大気汚染物質や水質汚染を懸念する声があがっています。井戸の閉鎖や浄化対策費用は場所によって大きく異なりますが、もともと政府が国有地の井戸などに課金しているリース料では浄化や閉鎖費用まで負担できないとして、何らかの公的負担が必要との意見もでています。

会計検査院では昨年時点で、不明井戸等の費用負担に関して懸念するレポートが公表されています。

会計検査院の2019年のレポート

https://www.gao.gov/products/GAO-19-615#summary

 

 

中国:原子力発電拡大

2030年までに中国国内の原子力発電の割合を10%にし、2040年に13.5%、2050年には22%にする計画で、原子力発電所の建設を拡大しています。欧米や日本での原子力発電が減少する中、クリーンエネルギーだけでなく、原子力の分野でも中国が世界最大の市場になる方向となっており、原子力発電所を年間6-8カ所建設する計画となっています。

2022年には、米国市場を抜いて世界一となる予定です。

(参考)世界の原子力発電の新規建設状況(2020年5月更新)

https://www.world-nuclear.org/information-library/current-and-future-generation/plans-for-new-reactors-worldwide.aspx

 

中国:家庭用太陽光発電の補助金拡大

中国で家庭用の太陽光発電プロジェクトに対する補助金申請が増加しており、予算を拡充して追加される分も補助する予定です。

また、再生可能エネルギーへの補助金も昨年より7.5%多く、約1.5兆円規模の予算が投じられる予定で、太陽光、風力、バイオマスの順に多くなっています。

http://www.nea.gov.cn/2020-06/15/c_139140513.htm

 

テスラ自動車に高速エアコン(大気浄化装置)と蒸留水(飲用水)製造機能
HVAC
Heating, ventilation, and air conditioning ,HVAC)

テスラは自社の電気自動車に通常の自動車のエアコンフィルターの10倍の大きさのフィルターで一般的なプレミアムカーの100倍の浄化機能があり、PM(Particular Matter)をはじめ、ウィルスやカビ等の大気汚染物質を短時間で病院のクリーンルームレベルにする大気浄化システムを導入したと発表しています。生物兵器防御モード(Bioweapon Defense Mode)では微粒ウィルスも除去するとしています。

また一日走行で約2リットルの水を蒸留するシステムも導入。飲用水レベルに浄化するとしています。

 

グリーン水素(Green Hydrogen) Project

ユタ州、ネバダ州、カリフォルニア州をつなぐ送電線を管理するthe Intermountain Power Agencyは、1980年代から稼働する現在の石炭火力発電をリタイヤさせ、天然ガスによる発電所に2025年に更新する予定です。2つの燃焼タービンをもつ設備は、当初30%のグリーン水素を投入し、最終的には2045年までに100%水素による発電に切り替えると発表しており、カリフォルニア州にあるBlack & Veatch社が設計、建設を含めた技術コンサルティングを行っています。

https://www.bv.com/news/black-veatch-supporting-western-power-agency-first-hydrogen-capable-combined-cycle-units

 

https://www.powerengineeringint.com/renewables/black-veatch-helps-intermountain-power-agency-transition-to-green-hydrogen/

 

カリフォルニア州でGreen Hydrogen Projectがスタート

カリフォルニア州にあるSGH2 Global社は、カリフォルニア州のランカスター市で世界最大規模のグリーン水素プロジェクトを開始しました。同社とNASAの科学者が開発した技術はプラズマ強化ガス化技術によって、紙、布製品、プラスチック等の廃棄物からエネルギーをつくるもので、年間4200トンのリサイクル廃棄物から、380万トンの水素を製造する予定となっています。

このプロジェクトは、再生可能エネルギーから水素を作るいわゆる“グリーン水素”よりさらにCO2排出は少なく、価格も安価になるということです。

施設の設計建設は大手エンジニアリング会社Flour社が請け負っており、パートナーとなっています。フランス、サウジアラビア、ウクライナ、ロシア、中国、韓国他、日本でもプロジェクト化の話があると公表しています。

https://www.sgh2energy.com/results

https://sg-h2.squarespace.com/

 

再生可能型水素(Renewable Hydrogen)

再生可能型水素の開発を行うカリフォルニア州(サンタバーバラ)のHyperSolar社は、太陽光と水(海水、排水などあらゆる水)でつくる水素太陽光発電パネル(Gen1水素パネル)の製造を開始するようです。同社では、送電に頼らない水素発電を目指しており、既存の電解技術を使って価格競争力のある水素太陽光発電を開発しています。開発中の次世代Gen2パネルは、ナノテクを使って、再生可能水素エネルギーを開発中のようです。

https://hypersolar.com/news/2020/6/11/hypersolar-to-begin-production-on-100-hydrogen-generation-units-for-demonstration

 

アメリカのエネルギー消費:2019年は再生可能エネルギーが石炭消費を超える

1880年代から統計を取り始めて、初めてアメリカの年間エネルギー消費のうち石炭の消費量が再生可能エネルギーを下回ったとエネルギー省エネルギー情報局が発表しています。2018年と比較して石炭の消費量は15%減少し、1964年以来最低水準となった一方、再生可能エネルギーは1%成長しました。

https://www.eia.gov/todayinenergy/detail.php?id=43895

2020年2月・3月についても再生可能エネルギーの消費が増えており、太陽光と風力の成長が大きいようです。

https://www.eia.gov/totalenergy/data/monthly/pdf/mer.pdf

 

企業のSDGs/ESG/投融資関連

ユニリーバが気候変動目標をアップデート(2020年6月15日公表)

同社の7万製品にCO2排出ラベルを貼付、2039年までにカーボンゼロ達成をめざす

ユニリーバは、気候変動に関する目標を更新し、2039年までに自社の製造にかかわるサプライヤーも含めてカーボン・ゼロを目指すことを発表しました。同社は自社製品7万に排出量を示すラベル貼付も予定しています。今後10年で10億ユーロ(約1,300億円)を投じて、気候変動、水問題にも取り組むとしており、森林保全に配慮したサプライチェーンの取り組みは2023年までに達成できる予定としています。また、水資源の保全のため、2030年までに製品を生分解素材に変更する方向も示しています。

https://www.unilever.com/news/press-releases/2020/unilever-sets-out-new-actions-to-fight-climate-change-and-protect-and-regenerate-nature-to-preserve-resources-for-future-generations.html

 

国際資本市場協会(International Capital Market Association, ICMA)が、持続可能性に関連する債券の自主原則と事例集を発行(2020年6月)

いわゆるグリーンボンド・ソーシャルボンドなどを含めたSustainable Bond は世界で急成長していますが、ICMAは持続可能性に関連する債券の自主原則と事例集を発行しました。ICMAは2018年にSustainable Bond に関する定義などを示した数ページのガイドラインを発行していましたが、急成長するESGボンドに関してサステナビリティに関する指標(KPI、Sustainability Performance Target)を報告し、評価することを促す仕組みとなっています。

事例集には、日本企業として、JR東日本とANAホールディングスのソーシャル・ボンドの取り組みが紹介されています。

(自主原則)

https://www.icmagroup.org/assets/documents/Regulatory/Green-Bonds/June-2020/Sustainability-Linked-Bond-PrinciplesJune-2020-090620.pdf

(事例集)

https://www.icmagroup.org/assets/documents/Regulatory/Green-Bonds/June-2020/Social-and-sustainability-bond-case-studiesJune-2020-090620.pdf

 

海外環境規制

トランプ政権大統領令:COVID-19からの経済回復のためのインフラプロジェクトのスピードアップ(2020年6月4日)

トランプ大統領は、COVID-19からの経済対策としてインフラプロジェクトの迅速化に関する大統領令を発行しました。輸送関連のプロジェクトの推進や国有地におけるインフラ、エネルギー、環境保全等のプロジェクトを加速することを指示しています。

また、環境影響評価法(National Environmental Policy Act, NEPA)による手続きや絶滅危惧種法、水質浄化法などの手続きについて、30日以内にコメントを出すように指示しています。

もともと環境関連の許認可はアメリカでは数年から10年近くかかり、実質的な障壁になっていたため、2年以内の完了を目指す方針がだされていましたが、緊急時の経済対策としてさらに加速を目指した形です。

 

https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/eo-accelerating-nations-economic-recovery-covid-19-emergency-expediting-infrastructure-investments-activities/

 

関連の規制提案(2020年1月)

https://www.federalregister.gov/documents/2020/01/10/2019-28106/update-to-the-regulations-implementing-the-procedural-provisions-of-the-national-environmental

 

 

 

 

 

カリフォルニア州:飲用水中のマイクロプラスチックの定義を承認

カリフォルニア州水資源管理委員会(Water Resource Control Board)は、2020年6月3日、飲用水中のマイクロプラスチックについての定義を承認しました。3次元で1nm~5000micrometer (μm)の粒子をさし、自然にあるポリマーで化学的加工をされていないものは除外となっています。

https://www.waterboards.ca.gov/drinking_water/certlic/drinkingwater/docs/dfntn_jun3.pdf

この定義は2018年9月に制定した下記の条例に基づく手続きで、今後の法制化等の始まりに当たるという見方がでています。

http://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billNavClient.xhtml?bill_id=201720180SB1422

 

PFAS関連
オーストラリアのPFAS集団訴訟:一部和解も継続の見込み

オーストラリア政府は、2020年2月下旬にオーストラリア軍用地周辺のPFASによる地下水汚染に対する集団訴訟に和解しました。和解額は約2億オーストラリアドル(約160億円)になりますが、現在その他の州でそれ以外にも多数のPFAS訴訟があり、当面収束の見通しはないようです。

2月の連邦政府の和解公表の文書は下記にあります。

https://www.minister.defence.gov.au/minister/lreynolds/statements/terms-settlement-reached-pfas-class-actions

 

ニュージャージー州がPFOS, PFOAの飲用水基準を決定。より厳しい基準に

ニュージャージー州は、飲用水に関するPFAS最大濃度を、PFOA(14ppt), PFOS(13ppt)をする案を2019年から発表していましたが、2020年3月末に正式決定し、2020年6月1日から施行されます。

https://www.nj.gov/dep/rules/adoptions/adopt_20200601a.pdf

現在、アメリカの環境保護庁の暫定基準は70pptであることから、より厳格な基準になります。(日本で厚生労働省が規定した飲用水の暫定基準は2020年4月1日から施行されていますが、50pptです。)

 

ニューヨーク州のPFAS規制、コロナ危機により遅れ

ニューヨーク州では、PFOA, PFOSと1,4-dioxaneの水質モニタリング基準を策定する予定でしたが、コロナ危機により委員会等が延期になっており、基準策定が延期される見込みのようです。ニューヨークの基準案は全米で最も厳しい10ppt(PFOA, PFOS共に)と10ppb(1,4-dioxane)が提案されていました。1,4-dioxaneの飲用水基準はカリフォルニア州でも提案されています。

https://regs.health.ny.gov/sites/default/files/proposed-regulations/Maximum%20Contaminant%20Levels%20(MCLs)_0.pdf

 

 

環境関連研究

ミツバチ数減少続く

米国の養蜂家への調査によると、2019年4月から2020年4月までに蜂群(Bee Colonies)が約43%減少し、2006年に調査を開始して以来の減少幅となっています。米国の農産物の3分の一程度はミツバチによる受粉に影響していますが、1980年以降、商業用のミツバチは減少を続けており、寄生虫や農薬、栄養状態などの影響があるといわれています。

ミツバチを保全する団体が年次調査とそのレポートを発行しています。

https://beeinformed.org/citizen-science/loss-and-management-survey/

https://research.beeinformed.org/loss-map/

*米国農務省の研究(ミツバチの健康状態の変化に関する経済影響と対応について)では、2006年以降、冬季のミツバチ群の減少は平均して28.7%であり、冬季の平均死亡率(15%)の倍近くになっています。このため、将来の食品供給網への影響が懸念されています。

しかし、こうした冬季のミツバチ群の減少にもかかわらず1996年から2016年のミツバチ群数はおおむね安定しており、冬季の減少率との相関性はみられていないとしています。この背景として、米国内でアーモンドの生産が増え、またアーモンドへの受粉サービス等が大幅に増加していることがあるようです。1988年から2016年に養蜂家の群あたりの収入は倍増しており、2016年時点で、全受粉サービス収入の8割がアーモンド受粉によるものとなっています。アーモンド以外の食品について、受粉に関わる費用は、市場で食品販売価格の中で1%未満となっており、受粉サービスの価格の経済影響は非常に小さいものとなっています。

https://www.ers.usda.gov/webdocs/publications/88117/err-246.pdf?v=43186