国際会計基準と環境債務の動向

国内での国際会計基準の強制適用は当面見送られ、任意適用の範囲を広げる方向という報道があり、金融庁からも任意適用に関する報道情報がだされました。

http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kigyou/siryou/soukai/20130528.html

数年前の国際会計基準との収斂では、資産除去債務に関する環境関連の費用をどのように認識・計上するか課題もありましたが、すでにルールが定着している米国内では、現在も国際会計基準との関連で、環境関連の費用認識や開示が今後どのように変わるかという議論が継続的にフォローされています。

結論からいうと、米国では当面(今後数年間は)、国際会計基準との関連で、米国内の環境債務の開示などに関する必要事項が変わる可能性は低いとみられているようです。

http://www.americanbar.org/content/dam/aba/publications/nr_newsletters/ed/201212_ed.authcheckdam.pdf

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Social Hotspots

日本で、ホットスポットというとセシウムなど放射性物質の値が局所的に高い場所という印象が強いですが、サプライチェーンのCSR評価、CSR調達等における、社会面(労働や人権など)地域や業種の評価をする世界の”Social Hotspots Portal”がオープンしました。

http://socialhotspot.org/

このポータルでは、CSRの評価をする際の社会的側面の評価をするグローバルデーターベースを展開しています。ポータル・サービスを提供しているのは、アメリカ東部メイン州にあるNPO:Social Hotspots Databaseで、製品のSocial Life Cycle 分析に関するガイドラインを、国連環境計画とともに公表しています。
アドバイザリー委員会には、主要なCSR関連組織であるBSRやAccountAbility, SustainAbilityなどのほか欧米の大学の研究者、大手企業、EPAも入っており、賛同者が多いことが伺えます。エコラベル等のデータベースを提供する国際貿易センタ(ITC)とも戦略パートナー関係を締結しており、グローバル展開する調達先の環境・社会面のリスク管理に向けたインフラが整ってきているようです。

CSR報告書のガイドラインであるGRIの最新版G4でも、サプライチェーンの状況報告が拡充されることになり、今後こうしたデータベースを活用する機会も増えてくるのではないかと思います。

これらの情報を社内でどのように活用し、リスク管理につなげるかが課題になりそうです。

アメリカのエネルギー情報

 

米エネルギー省がパートナー組織や企業と実施しているエネルギーデータイニシアティブの一環として、この5月に、以下のエネルギー情報のサイト”Free Energy Data (FRED)”がオープンしました。各州の1960年代からのエネルギー源や需給トレンド、エネルギーフローが一目で見えるようになっており、今後の予測値が2035年まではいっています。

とてもビジュアルにも工夫されているだけでなく、自分のデータを追加して分析することもできるようになっているようです。自治体や企業等がエネルギーに関する計画や意思決定などをするのに役立ててもらおうという試みのようで、アメリカのOpen Data Initiative の一環とのことです。 続きを読む

GRI G4発行

Global Reporting Initiative (GRI)のG4が発行されました。(以下からダウンロードできます。)

https://www.globalreporting.org/reporting/g4/Pages/default.aspx

パート1(90ページ超)、パート2(260ページ超)で、読み込むのにも時間がかかりそうです。

日本語訳の発行は、2014年1月の予定とのことです。

世界の廃炉

敦賀原発の今後の再稼働についての報道が続いていますが、世界各国では、原子炉の廃炉はどのような要因で行われているのでしょうか。

世界原子力協会のレポートによると、2013年時点で世界全体の原子炉の廃炉について、その要因別に分類すると、通常の経年や経済的な合理性に基づくものが101、事故によるものが11、そしてこのどちらにも該当しない政治的な決定によるものが25となるようです。このリストが以下のレポートにまとめられています。

http://www.world-nuclear.org/info/Nuclear-Fuel-Cycle/Nuclear-Wastes/Decommissioning-Nuclear-Facilities/#.UZlaC7VU-bM

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シェールガス開発成功の背景(その1)

先週末はアメリカからのシェールガスが2017年にも日本に輸出されることが決定されたというニュースがありました。アメリカでは現在、シェールガスが天然ガス全体の3割強を占めるとされていますが、2015年までに4割を超えるという予想もあります(IHS Global Insight)。

こうしたなか、早くもアメリカでシェールガス開発がここまで成功した背景について分析が始まっており、アメリカのワシントンDCにある環境・エネルギー関連のシンクタンクから、シェールガス・ブームの背景となった政策や技術的な要因をレビューしたレポートが発表されています。(最初のアカデミックレポートとのこと)

http://www.rff.org/RFF/Documents/RFF-DP-13-12.pdf

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GRI G4とCSR2.0 とマネジメント2.0

今週、CSR報告書のガイドラインとして世界で最も定着しているGlobal Reporting Initiative (GRI)の最新版:G4が公表される予定となっています。G4では、サプライチェーンの記載や企業の業務に応じたバリューチェーンに沿ったマテリアリティ(重要性)を踏まえた報告を重視する方向のようですが、開示項目が現状から大幅に増え100項目を超えることも予想されており、CSR業界でも様々な意見があるといわれています。

http://www.verdantix.com/blog/index.cfm/post/92

GRIはCSRの情報開示に関するガイドラインですが、企業の社会的責任(CSR)全般について、これまで比較的個別に、また事業に付加的なアプローチがされ、本質的には企業経営において重視されてこなかったという反省や評価も少なくありません。このため、たとえば上記にも紹介されている意見の一つとして、コカコーラ社からは、CSR報告書は、CSRの専門家だけに評価されるものではなく、より広い範囲の関係者・読者に理解してもらうことが重要であるとして、ドラフト段階のG4について、より技術的にまた複雑になっているのではないかという課題も出されています。

http://www.cokecce.com/news-and-events/news/opinion-the-end-of-the-sustainability-report-by-lucinda-hensman-head-of-sustainability-communications-at-coca-cola-enterprises

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ASTM Phase1 E1527-13 案:主要な3つの変更点

土地売買やM&Aの際の環境デューデリジェンスの一環として広く活用されている、ASTMフェーズ1環境サイトアセスメント(ASTM E-1527-05)が8年ぶりに改訂され、年内にASTM E1527-13として発行される予定といわれています。

ASTM のこのフェーズ1基準は、ASTM基準の中でも最も実務的な普及が進んだ基準の一つといわれていますが、2005年版以降、多くの金融機関などが環境リスクマネジメントの方針を明確に打ち出したこともあり、融資や担保評価の際にももっとも広く活用されている環境デューデリ基準の一つとなっています。また、米国の土壌汚染対策の主要法令の一つであるCERCLA (通称スーパーファンド法)の調査方法や免責要件にも正式にリンクしており、今回の改訂に当たっても、米環境保護庁(EPA)でのレビュー期間があるようです。

今年の改訂では、これまでわかりにくいと指摘されていた用語の定義や範囲を明確にするとともに、新たにリスク管理として推奨する揮発性リスクの問題などを明示する予定となっており、改訂される大きなポイントは以下3つであるとアメリカの専門家などが分析しています。 続きを読む

アメリカ:環境データの電子化の動向:推奨から義務化へ

アメリカでは、すでにいくつかの省庁や州で環境データの提出について電子納品が義務化されていますが、昨年環境保護庁(EPA)から提案されている有害物質管理法(Toxic Substance Control Act, TSCA)のもとでの化学物質データの電子納品の義務化が一つの大きな流れとして取り上げられています。TSCAは製造や輸出する製品に含まれる化学物質が対象となるため関連する企業は少なくないと思われます。

http://www.epa.gov/oppt/chemtest/ereporting/

数年前から大気浄化法(CAA)の一部で電子納品が義務化されているほか、カリフォルニア州やニュージャージー州などでは一部のプログラムで法令上義務付けられているデータの一部で電子納品が義務付けられていますが、EPAでは今後新たに制定される法律についてはすべて電子納品を義務化することも検討しているようです。

この背景として、オバマ大統領の2011年1月の大統領令13563号に基づき、EPAが同年8月にまとめた以下、規制改善計画があります。 続きを読む

シェールガス開発と工場(精油所)の再利用

シェールガス開発によって安価に調達できる天然ガスに関連する工場の新設や米国での会社設立のニュースは定期的に報道されていますが、新設だけでなく、かつて使用されていた工場を再利用する、いわゆるブラウンフィールドの再利用のようなケースもあるようです。米国東部ペンシルバニア州フィラデルフィア市にある、いったん閉鎖された(または閉鎖予定だった)精油所がシェールガスに関連する加工・製造業に再利用される事例です。

2012年2月にいったん閉鎖された、米国東部のエネルギー会社SUNOCO社が保有していた全米でも最も古い精油所の一つ(約140年の歴史)を、カーライルグループが約200億円で購入し、天然ガスや関連製品を国内外に供給する施設として再稼働されるようになったとのことです。

http://www.reuters.com/article/2012/07/02/us-sunoco-carlyle-philadelphia-idUSBRE8610JF20120702

すでに、テキサス州Eagle Ford Shaleなどからの原油の加工等に活用されているようですが、今後ペンシルバニア州の東西に延びるパイプラインや高速鉄道をつなげて、Marcellus Shaleからの天然ガスをフィラデルフィア地域に電気やガス、熱を提供するプロジェクトにも拡大していくとのことです。

また、以前ConocoPhillipsが使用していた隣接する精油所は、 続きを読む

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