ASTMフェーズ1調査基準、年内に改訂へ

土地売買やM&Aにおいて世界中で活用されているアメリカASTM Internationalのフェーズ1サイトアセスメント基準(E1527)が年末までに改定される予定で、改訂の方向性が専門誌などで紹介されている。

今回の改訂は、現行の2013年版(E1527-13)から約8年ぶりの改訂となる。注目されている変更の一つは、フッ素系有機化合物であるPFAS(パー及びポリフルオロアルキル化合物、PFOS及びPFOA等)の取り扱いである。

改定案では、PFASについて、新たな汚染物質(Emerging Chemicals)として追記される予定といわれていわれている。

PFASについては、世界的に法制化が進んでおり、国内でも本年4月に化審法において「PFOA又はその塩」が第一種特定化学物質に指定され10月から施行、また、水道水については、2020年3月から水道法における管理目標設定項目にも追加された。

アメリカでは、各州で制度化が進んでいるが、連邦政府としての規制は有害物質排出登録簿(TRI)の報告対象物質として指定されているほか、飲用水に関する規制を2021年末までに制度化する方向が示されている。

こうしたアメリカのPFAS法制化の動きについては、今年1月に会計検査院が調査報告書を発表しており、土壌や地下水汚染の対象となる有害物質としては現時点では指定されていない。一方、工場跡地や国防省施設等では調査・対策等も進んでおり、不動産売買やM&Aにおけるデュー・デリジェンスにあたっては、PFASの取り扱いや位置づけについて課題になっている。

こうしたなか、商用不動産取引等において必須とされるASTMのフェーズ1調査基準において新たな汚染物質として位置づけられることになれば、売買当事者や投資家等の認識が高まり、また調査を実施する環境コンサルティング会社や専門家にとっても必要に応じて追加調査の提案や説明がしやすくなる。

PFASについて、欧州では、代替材の使用が難しい場合を除き、原則禁止する提案がなされているが、産業界などが反対意見などを表明している。

PFASは、消火剤やテフロン加工だけでなく、食品梱包材や耐火性の高い布製品、様々な工業製品に多用されており、その種類も数千に及ぶ。また、過去数十年にわたって使用されてきたため、特に土壌や地下水汚染については現状の暫定基準までの浄化対策には多額の費用がかかる可能性が高く、各国とも現在、制度化を見極めている段階だ。しかしながらすでに飲用水や含有物質としての規制は始まっていることから、当面は土地売買やM&Aにおいては、買主・売主、仲介者、デュー・デリジェンス実施者等、それぞれの立場でリスク管理をすることが望ましいといえるだろう。

*本稿は環境新聞(2021年7月14日)に掲載されました。